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Twitter文学、それはもう一つのChatGPTである──統計的に確からしい地獄絵図『本当に欲しかったものは、もう』書評

先日発売した『本当に欲しかったものは、もう──Twitter文学アンソロジー』について、人気ツイッタラーで国内外のスタートアップ業界に詳しい、らんぶるさん(TwitterID:@tamuramble)に論じていただきました。
らんぶるさんは、今最も注目される人工知能ツール〈ChatGPT〉と〈Twitter文学〉の共通点を読み解きます。

ナボコフの創作メソッド

ロリコンの語源でもある小説『ロリータ』で一世を風靡したロシア人作家ウラジミール・ナボコフは、こんな風に本を書いていたそうだ。まず情報カード(index card)をたくさん用意する。罫線の入ったもので、15行ほど書けるものだ。そこに思いつくままに文章を書いていく。カードが文字で埋まったら次のカードに。しばらくしてカードが溜まってきたら、今度はカードを並び替える。そうすると当初思い描いていたストーリーとは全く違うプロットが見えてくるので、それに従ってストーリーをまた新しい情報カードに書き直す。そうこうしているうちに何千というカードの山ができ、そのカードの山の中から最終版の物語を選ぶことで、ひとつの小説が完成する。

Twitter文学に邂逅した時、私はナボコフの創作メソッドを思い出した。140字ごとに几帳面に区切られたスレッドに、ナボコフの情報カードとの表面的類似性をみたからだ。だがよくよく考えてみると、両者には決定的な違いがある。ナボコフのカードが最終的なアウトプットを紡ぎ出すための中間表現であるのに対し、Twitter文学はできたカードからツイートとして発信していく。いいねとリツイートという数値化された読者のフィードバックを羅針盤に、新しいカードが140文字以内で継ぎ足され、ある時終わる。読後感たっぷりに終わることもあれば、突然終わることもあるが、少なくともナボコフのように膨大な時間をかけたカードの並び替えから編み出された配列でないことは確かだ。もっと刹那的で、でも誰かの脳内の膨大な試行錯誤の末に紡がれるツイートの連鎖。これは一体何なのだろう。

ChatGPTとの類似

Twitter文学のアナロジーを、私は意外なところに見出した。先月、初めてChatGPTに触れた時のことだ。膨大なインターネットの集合知を元に、あたかもそれっぽい答えを用意してくることから、学歴コンプレックスがない私大文系卒とも評されるGPT-4の知能レベルの高さに驚くと共に、一文字一文字じらすようにチャット画面に回答する様が、不気味なほど人間らしく感じられたのだ。エキスパートいわく、これは大規模言語モデルが次の文字列(トークンというらしい)として統計的にもっとも確からしいものを選び続けているかららしい。しかし文系脳の私には、Twitter文学の語り手が、一文字一文字考えながら、TLの反応を気にしながら、小さなスマホ画面にフリック入力している姿に重なった。

統計的にもっとも確からしい──これはTwitter文学の一つの特徴であるように思う。「立教を卒業して外食チェーン店のマーケティング部に就職」したにもかかわらず、経済的現実を受け入れられず若さの切り売りを続ける自称26歳の女(『必見! ギャラ飲みで毎月100万円簡単に稼ぐ方法♪』かとうゆうか)。「金の匂いを一ミリも感じさせない」が、とにかく利回りのよい金融商品が欲しいと、行員からの説明も半ばに現生2本を置いて去っていくステテコを履いた男(『初成約』豊洲銀行 網走支店)。息子の中学受験にのめり込む妻に対して「最後医者にさせるんだったら別に開成である 必要はない。医学部がみな御三家から来てると思ってるのか」と冷ややかな視線を送りながらも、「心から開成に入って欲しいと思っていたわけじゃないが、ここまで頑張ったのなら息子は報われてほし」い中年の危機真っ只中の勤務医(『中学受験体験記 ~親子3人で支え合う家族の輪~』pho)。この本はそんなもっとも確からしい人たちが、何十人と出てくる。みんな違って、みんなありふれている現代社会という地獄絵図、それが私の率直な感想だ。

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らんぶる

ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代に六本木で生まれる。10代で渡米、某有名米国大学を卒業後、金融業界、スタートアップ業界を15年ほど渡り歩き、2020年に日本に帰国。片田舎でツイッターをしながらメルマガ『コッカラSaaS』を執筆中。

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