よみタイ

「現場が暑くて本当によかった。どれだけ泣いても汗だって言い張れるから」…ドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』原作者・爪切男の最終回ロケレポート

爪切男さんの同名エッセイを原作としたドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』も昨日、9月12日(木)23時59分からの最終第10話をもって終了となりました。そして、最終回のクライマックスとなった同窓会シーンは見逃せないと、爪さんも現場見学に行っていたのです。
今回はその現場レポートと、この愛すべきドラマに対する原作者の感謝のメッセージをお届けします。

(取材・文/爪切男 撮影/よみタイ編集部)

原作者が行くロケ地“聖地巡礼”の旅

 前回に引き続き、またもやドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』の撮影現場にお邪魔させていただきました。何度も現場に足を運ぶのは、周りに気を遣わせてしまってご迷惑だろうなと思いつつも、ワガママを言わせていただきました。だって……大人になったクラスメイトたちが一堂に会する同窓会のシーンですよ。そんなの見たいに決まってるじゃないですか。

 ということで、はるばるやって参りました茨城県龍ヶ崎市。木村昴さん演じる枝松脛男(えだまつ・すねお)のふるさと、そして中学生時代の学校での撮影はここで行われていたのです。

 約束の時間まで余裕があるということなので、いわゆる“聖地巡礼”なるものをやってみることに。クルマの車窓から見えるのどかな風景が、私が生まれ育った香川県の雰囲気によく似ていて、本当に里帰りをしているような郷愁に駆られる私。久しぶりに琴電にゴトゴト揺られたくなりました。

爪切男のロケ地“聖地巡礼”その1。ドラマでおなじみ、関東鉄道竜ヶ崎線の終点「竜ヶ崎駅」です。
爪切男のロケ地“聖地巡礼”その1。ドラマでおなじみ、関東鉄道竜ヶ崎線の終点「竜ヶ崎駅」です。
竜ヶ崎線の車両をみて、ふるさと香川県の琴平電鉄(通称ことでん)に想いをはせる爪切男。
竜ヶ崎線の車両をみて、ふるさと香川県の琴平電鉄(通称ことでん)に想いをはせる爪切男。

 第2話にて、野呂佳代さん演じるジャイアントスイングプリンセス橘文香(たちばな・ふみか)の娘さん(三宅りむ)と脛男が出会った公園にも足を伸ばしました。劇中で脛男がノートパソコンで原稿を執筆していた場所に座ってご満悦。アニメでもなんでも聖地巡礼をする人たちの気持ちが少しわかった気がします。

爪切男のロケ地“聖地巡礼”その2。市内の公園。ドラマと同じ場所で原作者もノートパソコンを開いてみました。
爪切男のロケ地“聖地巡礼”その2。市内の公園。ドラマと同じ場所で原作者もノートパソコンを開いてみました。

舞台となる中学校へ潜入して見た風景とは?

 そしていよいよ中学生時代の舞台となっている学校へ。現在では廃校となっているそうですが、建物から染み出るにおい、廊下を歩く時のキュッキュッという足音、窓から差し込む太陽の光、その全てがなんとも懐かしい。

 子供の頃の私は、とにかく学校が大好きな珍しい子供でした。厳格な父親がいる我が家、その鬼の目を盗んで羽根を伸ばせる唯一の場所が学校だったからです。そんな避難場所だったはずなのに、今回こうして現場を訪ねてみて気付かされました。私はやっぱり学校という場所が大好きです。良い事も悪い事も……悪い事の方がたくさんあったけど、先生やクラスメイトとの出会いと思い出がなかったら私は今まで生きてこれなかったと思います。

ドラマの殿山中学校に潜入。中庭の石にあった「粉骨砕身」もじつは撮影用。細かすぎるこだわりに感激する爪切男。
ドラマの殿山中学校に潜入。中庭の石にあった「粉骨砕身」もじつは撮影用。細かすぎるこだわりに感激する爪切男。

 という感動もここまで。廃校となっている関係で冷房設備が全く使えない撮影現場はまさに灼熱地獄でございました。
 大型扇風機、ハンディファン、ネッククーラー、氷嚢、冷感スプレーなどを駆使してもどうにもならない夏の暑さ。現場に到着してものの数分で私もすぐに滝汗状態に。冗談抜きに体感温度は40度をゆうに超えていたのではないでしょうか。

 でもそれが何か嬉しかった。原作者という立場ですが、やはり現場にて苦楽を共にしてドラマを制作している方々との間にどこか距離感を感じるものです。こうして現場のしんどさを体験して、一緒に汗だくになれたことで私も仲間の一員になれた気がしました。子供の頃、大雨の中を傘を差さずに一緒にずぶ濡れになって帰ったクラスメイトの女子のことを思い出しながら、ゆでだこ状態で撮影を見守りました。

気温は35度超え! 見学だけでも過酷な日でした。木村昴さんからいただいたオリジナルのハンディファンを持つ爪切男(汗だく)。
気温は35度超え! 見学だけでも過酷な日でした。木村昴さんからいただいたオリジナルのハンディファンを持つ爪切男(汗だく)。
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爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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