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【佐久間宣行×三宅香帆 特別対談/後半】20万部超えベストセラーを生み出した二人の仕事術、共通点は?

発売初週で累計10万部を超えるスマッシュヒットを飛ばし現在20万部突破、さらに「書店員が選ぶノンフィクション大賞2024」を受賞した『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)の著者である三宅香帆さん。じつは『ごきげんになる技術 キャリアも人間関係も好転する、ブレないメンタルの整え方』(集英社)を上梓した、ニッポンのエンタメ界を牽引する佐久間宣行さんが手がける作品のファンという経緯から、対談が実現。

前半はお互いの著書の感想や、働きながら自分のごきげんをいかに保つか、「本」というメディアのメリットなどについて語っていただきました。
後半は、仕事の原動力、そして自分がやりたい仕事で結果を出すために考えていることなどをトーク!

取材・文/広沢幸乃
2024年12月オンラインにて対談を実施
2024年12月オンラインにて対談を実施

キャリアを築くためには自分自身を知ることが大切

三宅 私の仕事の原動力は、好きな作品の醍醐味を伝えたり、適切な批評をしたりすることで、自分が良いと思う作品が広がってほしい、という思いです。結果、世の中がいい方向にいけばいいな、と。

それを理想としながらも、現実的には他者から見たとき、自分のキャラクターや方向性がもっとわかりやすい方がいいのでは?と悩むこともあります。
佐久間さんがつくるものは、どの作品でもさりげなく“佐久間宣行印”がついていますよね。それが本当にすごいです。

佐久間 僕の場合、早い段階で自分が持つ武器(才能)や趣味嗜好がメインストリームじゃないことに気づいて。オードリーの若林くんの言葉を借りると、ボンネットを開けてエンジンの搭載量やクセみたいなものをつかんだからこそ、自分という車の乗りこなし方がわかったというか。野球で言えば、ストレートに投げたつもりがシュート回転しちゃうから、それを踏まえてストライクゾーンにどう投げるか、みたいな。自分のクセをコントロールせずにボールばかり投げてたら、この先、食べていけないなという感覚は、ずっとあったんです。

三宅 それに気づいたのは、いつ頃でしたか?

佐久間 30代前半ですね。テレビ東京に入社して2年目で企画が採用された「ナミダメ」も、「ゴッドタン」の前身「大人のコンソメ」も、新人賞を受賞したり一部の評価は高かったけれど、番組自体は半年で終了してしまって。濃くてコアな作品だけに特化してもキャリアは続かないことがわかった。だからまずは社内で社会人としての信用を確立すること、そして自分のキャラクターや能力を知ること、あとは作品の届け方を考えました。

三宅 そこに劇団ひとりさんや東京03さん、バナナマンさんなど、まだ無名だった関東の芸人さんをキャスティングすることも、佐久間さん自身の旗印になった、ということでしょうか。

佐久間 それもありましたね。当時のテレビ東京にはお笑い番組がなかったんですよ。後期参入という立場だったので、料理人でたとえるなら待っているだけでは上質な牛肉や新鮮な野菜はまわってこない環境。だから自らの足で生産者を探しに行くしかなかったというか(笑)。

ヒット作を作るためには世の中への伝え方も大切

三宅 いろいろと合点がいきました。現代は、コンテンツをヒットさせるには世の中への届け方も重要ですが、佐久間さんはそこも丁寧だなといつも思います。SNSは忙しいとおざなりになりますが、佐久間さんのXを見ると「こんなに忙しい佐久間さんもちゃんと告知してる……」と、やる気をいただいています。

佐久間 特にフリーランスになってからは「適切な納品(〆切)と告知が大事だ」と教わりました。

三宅 納品と告知! ちなみにSNSの運用に関して、ご自身なりのルールやルーティンはあるのですか?

佐久間 告知とともに市場調査を兼ねて、番組名でエゴサしますね。「こういう告知の記事だとシェアされやすい」とか「バズりやすい」といったことは肌感覚でわかっておいたほうがいいし、把握できていないとズレていく気がして。
時にはヘコむポストを目にすることもありますが、それ以上にYouTubeのサムネイルのタイトル決めなどに役立ったり、得るものも多い。

YouTubeを始めた2021年の頃は、内容が面白ければ観てもらえる気でいたのですが、サムネイルの段階である程度の面白さが伝えられないと観てはもらえないし、テレビともラジオとも視聴者層は大きく乖離していることも知りました。
だから集中してYouTubeの作戦を練り直した結果、「地上波を知り尽くした上で、地上波では流せないふざけた企画を本気でやる」というコンセプトに。今では、チーム全員のグループLINEとは別に“サムネ検討用”のグループを作っているほどです。

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三宅香帆

三宅香帆(みやけ・かほ) 文芸評論家。1994年生まれ、高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了(専門は萬葉集)。『人生を狂わす名著50』(ライツ社)でデビュー以降、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)など著書多数。『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『娘が母を殺すには?』(PLANETS)『30日 de 源氏物語』(亜紀書房)など新刊も続々。聡明かつ抜群のコミュ力で、さまざまなメディアでもひっぱりだこ。YouTubeチャンネル「三宅書店」も開設。

佐久間宣行

佐久間宣行(さくま・のぶゆき) テレビプロデューサー、ディレクター、演出家、ラジオパーソナリティ、作家。「ゴッドタン」「トークサバイバー!1〜3」「インシデンツ1・2」「LIGHTHOUSE」などのテレビ番組、配信作品を手がける。「オールナイトニッポン0(ZERO)」の最年長パーソナリティの他、バラエティ番組のMCとしても活躍。『佐久間宣行のずるい仕事術 ――僕はこうして会社で消耗せずにやりたいことをやってきた』は20万部を突破。『その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』(ダイヤモンド社)も好評発売中。YouTube チャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」は登録者数242万人を突破(2024 年12月現在)。「BSノブロック〜新橋ヘロヘロ団〜」も人気。

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