2024.12.28
【佐久間宣行×三宅香帆 特別対談/後半】20万部超えベストセラーを生み出した二人の仕事術、共通点は?
前半はお互いの著書の感想や、働きながら自分のごきげんをいかに保つか、「本」というメディアのメリットなどについて語っていただきました。
後半は、仕事の原動力、そして自分がやりたい仕事で結果を出すために考えていることなどをトーク!
取材・文/広沢幸乃
キャリアを築くためには自分自身を知ることが大切
三宅 私の仕事の原動力は、好きな作品の醍醐味を伝えたり、適切な批評をしたりすることで、自分が良いと思う作品が広がってほしい、という思いです。結果、世の中がいい方向にいけばいいな、と。
それを理想としながらも、現実的には他者から見たとき、自分のキャラクターや方向性がもっとわかりやすい方がいいのでは?と悩むこともあります。
佐久間さんがつくるものは、どの作品でもさりげなく“佐久間宣行印”がついていますよね。それが本当にすごいです。
佐久間 僕の場合、早い段階で自分が持つ武器(才能)や趣味嗜好がメインストリームじゃないことに気づいて。オードリーの若林くんの言葉を借りると、ボンネットを開けてエンジンの搭載量やクセみたいなものをつかんだからこそ、自分という車の乗りこなし方がわかったというか。野球で言えば、ストレートに投げたつもりがシュート回転しちゃうから、それを踏まえてストライクゾーンにどう投げるか、みたいな。自分のクセをコントロールせずにボールばかり投げてたら、この先、食べていけないなという感覚は、ずっとあったんです。
三宅 それに気づいたのは、いつ頃でしたか?
佐久間 30代前半ですね。テレビ東京に入社して2年目で企画が採用された「ナミダメ」も、「ゴッドタン」の前身「大人のコンソメ」も、新人賞を受賞したり一部の評価は高かったけれど、番組自体は半年で終了してしまって。濃くてコアな作品だけに特化してもキャリアは続かないことがわかった。だからまずは社内で社会人としての信用を確立すること、そして自分のキャラクターや能力を知ること、あとは作品の届け方を考えました。
三宅 そこに劇団ひとりさんや東京03さん、バナナマンさんなど、まだ無名だった関東の芸人さんをキャスティングすることも、佐久間さん自身の旗印になった、ということでしょうか。
佐久間 それもありましたね。当時のテレビ東京にはお笑い番組がなかったんですよ。後期参入という立場だったので、料理人で譬えるなら待っているだけでは上質な牛肉や新鮮な野菜はまわってこない環境。だから自らの足で生産者を探しに行くしかなかったというか(笑)。
ヒット作を作るためには世の中への伝え方も大切
三宅 いろいろと合点がいきました。現代は、コンテンツをヒットさせるには世の中への届け方も重要ですが、佐久間さんはそこも丁寧だなといつも思います。SNSは忙しいとおざなりになりますが、佐久間さんのXを見ると「こんなに忙しい佐久間さんもちゃんと告知してる……」と、やる気をいただいています。
佐久間 特にフリーランスになってからは「適切な納品(〆切)と告知が大事だ」と教わりました。
三宅 納品と告知! ちなみにSNSの運用に関して、ご自身なりのルールやルーティンはあるのですか?
佐久間 告知とともに市場調査を兼ねて、番組名でエゴサしますね。「こういう告知の記事だとシェアされやすい」とか「バズりやすい」といったことは肌感覚でわかっておいたほうがいいし、把握できていないとズレていく気がして。
時にはヘコむポストを目にすることもありますが、それ以上にYouTubeのサムネイルのタイトル決めなどに役立ったり、得るものも多い。
YouTubeを始めた2021年の頃は、内容が面白ければ観てもらえる気でいたのですが、サムネイルの段階である程度の面白さが伝えられないと観てはもらえないし、テレビともラジオとも視聴者層は大きく乖離していることも知りました。
だから集中してYouTubeの作戦を練り直した結果、「地上波を知り尽くした上で、地上波では流せないふざけた企画を本気でやる」というコンセプトに。今では、チーム全員のグループLINEとは別に“サムネ検討用”のグループを作っているほどです。