2021.10.20
“畠山理仁の漫遊は水戸黄門を超えた説”を唱えたい——プチ鹿島さんが読む『コロナ時代の選挙漫遊記』
選挙取材歴は20年以上となる、開高健ノンフィクション賞作家の畠山さん。本書は2020年3月の熊本県知事選挙から2021年8月の横浜市長選挙まで、新型コロナウイルス禍で開催された全国15の選挙を、感染対策を万全にしながら丹念に現地取材した選挙ルポ記です。
その刊行記念として数回にわたり連続書評特集をお届けします!
初回は時事ネタ芸人として多くのファンを持つプチ鹿島さんによる特別寄稿。10月31日(日)に衆議院議員総選挙の投票日を控えるいまだからこそ読んでほしい書評です。
「人間」を知ろうとすることにどん欲なのだ
いやぁ、楽しい本でした。ワクワクしてしまった。これを読めば選挙に行きたくなります。自分の選挙区だけじゃないですよ、日本全国の選挙区に行きたくなるのです。
それほど選挙という「イベント」の磁力はすごい。人々のエネルギーが充満し、様々な感情が入り乱れる。
《そうした「選挙現場の熱」に少しでも触れれば、元気がなかった人も元気が出る。心にも体にもいい影響が出る。》
なんと! 選挙現場を20年以上取材している畠山さんが言うのだから間違いない。言われてみれば人々の喜怒哀楽がこんなにむき出しになる「イベント」は無い。
選挙は人を惹きつける。でもその熱の魅力をまだまだ多くの人は知らない。「一部」の人だけを対象にしている。
《だから私はみなさんの代わりに全国各地の選挙を「漫遊」し、選挙の楽しさを伝えようとしている。》
なるほど、漫遊かぁ。
《訪ねた地方で買い物をしたり、地元の美味しいものを食べたりするのも漫遊の楽しみだ。》
個人的なことを言わせていただくと、私はプロ野球やプロレスの興行を全国各地へ見に行くのが好き。野球だったら、本拠地のファンの声援を熱烈に浴びている選手やチームの姿を見に行く。それを「1塁側」から見るのも「3塁側」から見るのもいい。あらゆる角度(視点)で味わいたいから球場をぶらぶら一周したりする。様々な声や表情を収集したいのだ。プロレスだったら、その地域でおこなわれた試合が次にどうつながっていくか追うのが面白いし、土地土地の体育館の風情もたまらない。興行が終わったらご当地の美味しいものを食べるのも楽しみ。これはてっきりエンタメの楽しみ方だと思っていたら、畠山さんは選挙で実行していた。