だんだんと自分の知らない美月に気づき始める廉

プロポーズしたときも、結婚式で誓いの言葉を発したときも、自分の心に嘘偽りなんて微塵もなかったはず……だけど廉の心の片隅には、何か小さな痛みのようなものが存在し続けるのもまた事実だった。

そして挙式後は再び廉の赴任先のシンガポールに戻り、改めて新婚生活を始める廉と美月。

「廉との子どもが欲しい」……以前からその要望はあったけれど、シンガポールに戻ってから、美月のその願いはどんどん強さを増していく。いったいなぜ……？

しかも美月の子づくりに対する思いは、出社する廉に向かってこんなセリフを言うほどまでにヒートアップ。

（さあ、これから仕事だ！ってときにさすがにこれはちょっとゲンナリ。初めて廉を気の毒に思ったわ……え？　今まで思ったことはなかったって？？　えーと〈担当は里奈派〉）

そんな美月の言動に違和感を感じ始める廉。
そして、そのタイミングを見計らうかのように、東京から大学のサークルの同窓会の知らせが舞い込む。それを見てまず最初に思い出したのは……サークルで出会った頃の里奈だった。

里奈の顔を、声を、思い浮かべたとたんに胸に広がるどうしようもなく甘酸っぱい感情。
それがどういう想いなのか、感情なのか、この頃の廉にはまだわからない……。

（だから、そこがニブイんだっつーの……）

出がけに今夜のベッドの約束をさせる妻にはさすがに息苦しさを感じる～第15話（廉）