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小池都知事も見習いたい? 持統天皇vs.春日局、日本の政治を動かした史上最強の女帝はどっち?

7月5日に投開票が行われた東京都知事選では、現職の小池百合子氏が再選を果たしました。
女性初の都知事として首都の命運を担う小池都知事は、現代日本の“女帝”と称されることもあります。

日本の長い歴史の中にも、野心に燃え、権力をつかんだ女帝たちがいました。その代表といえば、なんといっても持統天皇と春日局でしょう。
今回は、書籍『東大教授も惚れる!  日本史 アッパレな女たち』の中から、「ニッポンの女帝対決 持統天皇vs.春日局」を抜粋してご紹介します。本書は、東大・史料編纂所の本郷和人教授が、日本史のさまざまな時代を彩ってきた女性たちの活躍をバトル形式で楽しく解説する1冊です。
あえて異なる時代を生きた歴史上の人物同士を“対決”させることで、それぞれの個性や魅力が際立ってくるのが読みどころ。
本郷教授が取り上げた女性たちを、人気漫画家まんきつさんがイラストでユーモアたっぷりに描いているのも必見です!

天照大神のモデルといわれる持統天皇と、謀反人の娘から徳川将軍の乳母君にのぼりつめた春日局。
生きた時代こそ違えど、日本の政治を動かした二人の女傑の人生には、どのような共通点や差異があったのでしょうか。
史上最強の女帝対決、本郷教授の判定は果たしていかに……?

(構成・文/よみタイ編集部)

日本という国の組織の礎をつくり、盤石にした女傑

 古代史研究者の倉本一宏くらもとかずひろさんは持統天皇じとうてんのうが、日本の古代史を拓き、日本という国をつくった」と高く評価しています。僕も、その評価はすごく当たっていると思います。
 持統天皇は天智てんち天皇、つまり中大兄皇子なかのおおえのおうじの娘。彼女が結婚した相手は、のちの天武てんむ天皇である大海人皇子おおあまのおうじで、天皇の弟。だから持統天皇は叔父と結婚したことになります。今であればアウトですけど、古代ではよくあることでした。この天武天皇&持統天皇ご夫妻のところで、日本の国のかたちがつくられることになります。
 まずこの二人の時代に、天照大神という女神を中心にした神話世界がきちんと整理され、高天原たかまがはらの天照大神の子孫が天皇であるという伝承が確立される。その「天皇」という称号も、この時代にできた。それまで、この国のトップは大王おおきみと呼ばれていたのです。大王は大きいかもしれないけどあくまで王さま。英語でいえばキング。しかし天皇は英訳するとエンペラーで、つまり天武天皇や持統天皇は「天皇とは王を超える存在だ」と言いたかったに違いない。
 しかし「天皇」となると、もはや中国の皇帝と同格の呼称。よく当時の唐が認めたなと思うのですが、そのころ唐のトップは中国史上唯一の女帝・武則天ぶそくてん則天武后そくてんぶこう)。この武則天は、現在の歴史学では極めて優秀で懐の深い人物だったとされています。この武則天だからこそ「面白い。認めてやろう」ということになったのかもしれません。
 持統天皇は、天武天皇との間にできた子ども、草壁皇子くさかべのおうじに皇位を譲ろうと考えていました。しかしこの皇子が早くに亡くなってしまい、忘れ形見の子、つまり彼女にとってはお孫さんが、若くして文武もんむ天皇になる。おばあちゃんの持統天皇は、初の上皇になって一生懸命、孫を支えるのです。
 この文武天皇の時代、701年に「大宝たいほう」という元号がたてられます。ふつうは645年の「大化たいか」が最初の元号だといわれていて、これは間違いじゃない。しかし「大化」の後、元号が定められなかった空白の時期が結構あるんです。でも「大宝」からは、常に元号が定められ、連綿と現代に至る。その意味では「大宝」が初の元号だともいえるでしょう。
 この大宝時代に編纂された、日本初の成文法が『大宝律令りつりょう。この法律の制定は、国の基礎として本当に高く評価されていて、だからこそ古代国家のことを「律令時代」「律令国家」と呼ぶわけです。この『大宝律令』の編纂作業の先頭に立っていたのが持統上皇であったと思うと、この人がいかに偉大だったかよくわかるでしょう。

©まんきつ/集英社
©まんきつ/集英社

「いかに立派だったか」という話ばかりだと面白くないので、人間らしいエピソードも紹介すると、彼女にとってのヒーローは、どうやら夫の天武天皇ではなく、パパの天智天皇だったらしい。だから天智パパの血をひく息子に皇位を継がせることにとことんこだわり、天武天皇がほかの女に生ませた皇子はどんどん失脚させています。
 これは彼女のマイナス部分といえばマイナス部分なのでしょうが、人間という生き物がやむを得ず持っている業の深さかな、という気もします。

 持統天皇は、日本をつくった女性。だからこそ伊勢神宮が祀っている、神さまの中でも最高神の天照大神は、彼女がモデルだといわれています。平塚ひらつからいてうが「元始、女性は太陽であった」と言いましたが、まさに古代国家、日本をつくったのは持統天皇だった。女帝オブ女帝の人です。

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新刊紹介

本郷和人

本郷和人(ほんごう・かずと)
1960年東京都生まれ。東京大学史料編纂所教授。
東京大学・同大学院にて石井進氏、五味文彦氏に師事し、日本中世史を学ぶ。著書に『新・中世王権論』『日本史のツボ』『承久の乱 日本史のターニングポイント』『戦いの日本史』『世渡りの日本史 苛烈なビジネスシーンでこそ役立つ「生き残り」戦略』、監修に『やばい日本史』など多数。
ドラマや漫画、アニメの時代考証にも携わり、識者としてはもちろん、日本史をわかりやすくおもしろく解説してくれる第一人者としても、各方面から引っ張りだこの存在。

まんきつ

1975年埼玉県生まれ。漫画家。
2015年に初の単行本『アル中ワンダーランド』を刊行。以降、『まんしゅう家の憂鬱』『湯遊ワンダーランド』など、独特の視点と描写によるコミックエッセイ、ルポ漫画が評判となる。2019年2月にペンネームを「まんしゅうきつこ」から「まんきつ」に改名。

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