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「結婚どころか、明日が見えなかった」又吉直樹と50歳独身漫画家が語る、氷河期世代の孤独

就職氷河期世代の恋愛と結婚に立ちはだかった「お金の壁」

――その頃は結婚についてはどうとらえていましたか?

中川 
僕はそれどころじゃなかったですね。これは世代や時代のせいだけじゃなくて僕自身が悪い部分もあるんですけど、20代の頃はずっと職を転々としていて、とにかく自分のことで精一杯で。結婚なんてところまで考えが全然いきませんでした。

又吉
あの頃よく報道番組とかで「就職氷河期世代の人たちの初任給はバブル世代に比べてこんなに下がっている」みたいに言われてたじゃないですか。「めっちゃかわいそうやな。生まれた時代が違うだけで、能力にそんな差はないやろうし」とか思いながら観てたんですけど、自分のほうが収入ないのを思い出してゾッとしたことありましたね。そんな状況やと、結婚がどうとかってなかなかピンとこないですよね。

1980年生まれの又吉さんは就職氷河期の後期世代で「最も厳しい世代」とも言われている
1980年生まれの又吉さんは就職氷河期の後期世代で「最も厳しい世代」とも言われている

――出会いの場に行くのも外でデートするのも、それなりにお金が要りますもんね。

中川 
漫画にも描いたんですけど、婚活パーティーに行ったとき、「男性と同額は払いたくない」って女性と小競り合いになったことがあったんです。そのときに「そうだった、そういえば昔は男のほうがお金をいっぱい払わなくちゃいけなかったよな」って、大学生の頃のコンパを思い出して。

僕は意識的に他者から離れて生きてきて、人と全然関わっていなかったのですっかり忘れてました。芸人さんはコンパをよくするイメージがありますが、又吉さんもそういう機会は結構多いですか?

又吉
僕も20代の頃は一切行ったことなかったです。先輩に呼ばれて顔出したことぐらいはあるんですけど、知らない人としゃべるのが苦手やったんで。あと、やっぱり経済的な理由もありましたね。

人におごるお金がまずなかった。2000年代初頭だと、まだ男性がおごるもんだって空気感があったじゃないですか。女性どころか、吉本興業は毎月25日が給料日なんですけど、20日ぐらいから後輩からの電話にも出なかったですからね。

留守電に「又吉さん、居留守使うんやめてもらっていいですか? 金使わん遊びしましょう」って入ってて、それ聞いてから「おぉ、ごめんごめん、ちょっと仕事やってん。公園行く?」って連絡して遊んでました。

中川 
後輩から気を使われて(笑)。

又吉
そんな感じだと、やっぱり気持ち的に人と会えないですよね。

中川 
でも、今は又吉さんは稼がれてるじゃないですか。

又吉
年相応の暮らしができるようになったという意味では、そうですね。

中川 
今は結婚に対しては、どうですか?

又吉
もちろん目標というか、できるならしたいというのはずっとあるにはあります。でも多分また別の問題、どっちかというと自分の未熟な部分の問題があるんだろうなっていうふうには思ってますね。

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中川学

なかがわ・まなぶ/1976年生まれ、北海道出身。北海道教育大学釧路校教員養成課程(数学)卒業後、中学の数学教師の職に就くが、仕事がつらすぎて失踪・辞職。その後、2005年、札幌の風俗店でくも膜下出血を発症し、闘病生活を経て漫画家に。著書に『僕にはまだ友だちがいない』『くも漫。』『探さないでください』などがある。

又吉直樹

1980年大阪府生まれ。
99年に上京し吉本興業の養成所に入り、2000年にデビュー。03年に綾部祐二と「ピース」を結成。現在は執筆活動に加え、テレビやラジオ出演、YouTubeチャンネル『渦』での動画配信など多岐にわたって活躍中。著書に小説作品として最新作『生きとるわ』『火花』(芥川賞)『劇場』『人間』、エッセイ集として『第2図書係補佐』『東京百景』『月と散文』等。

公式X@matayoshi0

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