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自殺はどうしたら防げるのか? 1万人以上を診察してきた精神科医が教える「危険なサイン」

自殺未遂が起こったら、すぐに入院を検討する

 患者さんがベランダから飛び降りようとしたり、大量に薬を飲もうとしたりしたところを、辛くも引き止められたとしましょう。落ち着いたようだし、とりあえずよかったと安心するのはまだ早いかもしれません。
 自殺未遂を一度でも起こしたら、入院治療を考えるのが原則です。落ち着いているように見えても非常に危険な状態であり、ここで気を抜くと後々悔やむことになる可能性が高いので、入院させる方向に動いてください。
 入院させるまでは多くの準備や手続きが必要で、時間がかかります。すべては家族が手配しなければなりません。ただ、自殺未遂にまで症状が進んでいるのであれば、そうも言っていられない状況です。すぐに主治医に連絡しましょう。
 たとえ夜中であろうと、受診するのをおすすめします。かかりつけ医以外でも構いません。全国の都道府県には「夜間休日精神科救急医療機関案内窓口」が設置されていますから、そちらにご連絡ください。ネットで検索すれば電話番号を確認できます。基本的には深夜でも対応してもらえますが、都道府県によって規定が異なるので、事前に確認しておくことをおすすめします。電話をかければ、その日の当番になっている病院につないでもらえて、そのまま受診することができます。

 すでに自殺未遂を起こしている場合は、いざ病院に向かうときは救急車を呼んでも構いません。あなた一人で自家用車を運転して、患者さんを病院に連れて行くのは危険です。運転中、患者さんが車から飛び出すリスクがあるからです。
 どうしても患者さんと二人で行くしかないなら、タクシーを呼んでください。移動中は、患者さんの横に座ってきっちり捕まえておきます。可能なら、後部座席の真ん中に患者さんを座らせ、その両脇に人が乗って患者さんを挟み、三人並んで座るのがベストです。私たち精神科医が患者さんを搬送する場合は、絶対にドア側には座らせません。
 自殺の衝動が一度出てしまったら、気を抜くことなく入院まで進めてください。

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井上智介

いのうえ・ともすけ
産業医・精神科医。
兵庫県出身。島根大学医学部を卒業後、大阪を中心に産業医・精神科医として活動する。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としてはうつ病、適応障害などの疾患の治療にあたっている。
「おおざっぱに(rough)笑って(laugh)生きてほしい」という思いから「ラフドクター」を名乗り、ブログやSNS、講演会などで情報発信している。『1万人超を救ったメンタル産業医の職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』『「あの人がいるだけで会社がしんどい……」がラクになる 職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』など著書多数。『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』でメンタル本大賞2022最優秀賞を受賞。

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