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「死にたい」のサインに気づいたら……精神科医が解説する、身近な人のメンタル不調への対処法

夏休みが終わり、1年で最も子どもの自殺が多いとされる9月1日が近づいてきました。
季節や年度の節目などは、子どもに限らず、自ら死を選ぶ人が増えるタイミングと言えます。
大切な人の「死にたい」というサインに気づいたとき、どうすればよいのでしょうか。
1万人以上を診察してきた、精神科医・産業医の井上智介さんによる著書『どうする? 家族のメンタル不調』より、身近な人から「死にたい」と打ち明けられた時の対処法をご紹介します。

「死にたい」と打ち明けられたら

「死にたい」
と、患者さんがこぼしたら、
「打ち明けてくれて、ありがとう」
「言いにくいことを言ってくれて、ありがとう」
「勇気を出して教えてくれて、ありがとう」
と、応えてください。
 ご家族はきっと驚かれると思います。頭が真っ白になって、嫌な汗が吹き出てきて、声が震えてしまうかもしれません。
「死ぬなんて、そんなこと言っちゃダメだ」
と、言いたくなるかもしれません。
 でも、ぐっとこらえてください。そして、「死にたい」という気持ちを伝えてくれた患者さんに、感謝の気持ちを伝えてください。
 私たち精神科の医師も同じように応えます。「死にたい」と人に言うのは、相当に勇気のいることです。心身ともに疲れきっている患者さんは、身を削る思いで「死にたい」と伝えてくれました。そのことに、まずは感謝しましょう。

「死んじゃダメだよ」
という言葉は、逆効果になる可能性があります。この段階にきている患者さんにとって、死は、今抱えるつらさ苦しさを解決してくれる唯一の光のように見えているからです。薬を飲むより、睡眠を取るより、死ぬことが一番ラクになれる方法なのだと思えてならないから、「死にたい」と言うのです。
 それなのに家族や医師が、「死んじゃダメだ」と言ってしまうと、患者さんは、
「しんどさから逃げるな」
と、逃げ道を塞がれたように感じます。そして、さらに追い詰められていきます。

「死にたい」は「死にたくなるほど、つらい」ということ

 患者さんの言う「死にたい」という言葉の真意は、
「今、死んでしまいたいほど、つらい」
ということ。
 そのつらさを、いいとか悪いとか言うのではなく、ありのまま受け取ってください。感謝した後に言葉を続けるときは、患者さんを主語にして話しかけるのではなく、自分を主語にして話しかけます。つまり、
「あなたは、死んではいけない」
ではなく、「私は、寂しいから死んでほしくない」
「僕は、あなたが生きているだけで幸せなんだ」
と、伝えることが大事です。これを「アイ・メッセージ」といいます。
 伝えた後できることは、物理的にそばにいること。「死にたい」と言われたとき、どれだけ患者さんと一緒にいられるかが、非常に重要になります。
 ただ、仕事や家庭の事情によっては、それが難しいときもあるでしょうから、
「いつでも話を聞くからね」
という精神的なつながりを感じられるようにしておく必要があります。こまめに連絡を入れるとか、もし患者さんから連絡があったらすぐに対応できる状況を整えておくなど、できる範囲のことで寄り添ってあげてください。
 それから、家にある自殺に使えそうな物は、徹底的に隠すか捨てるかしてください。包丁、カッター、はさみ、カミソリなど刃物類、それからネクタイやリボン、ベルト、ロープといった、細くて長いひも状のものも隠します。ベランダの鍵はしっかりかけて、できれば二重ロックにしておきます。
 また、薬の管理を患者さんに任せておくと、一度に大量に飲んでしまう危険があるため、必ずご家族が管理するようにしてください。
 もちろん、主治医には必ず伝えてください。次の診察日まで待つか、緊急性がありそうなら電話して事情を話し、診察日を早めてもらって付き添って受診してください。主治医の判断によっては、入院を検討することになるでしょう。

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井上智介

いのうえ・ともすけ
産業医・精神科医。
兵庫県出身。島根大学医学部を卒業後、大阪を中心に産業医・精神科医として活動する。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としてはうつ病、適応障害などの疾患の治療にあたっている。
「おおざっぱに(rough)笑って(laugh)生きてほしい」という思いから「ラフドクター」を名乗り、ブログやSNS、講演会などで情報発信している。『1万人超を救ったメンタル産業医の職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』『「あの人がいるだけで会社がしんどい……」がラクになる 職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』など著書多数。『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』でメンタル本大賞2022最優秀賞を受賞。

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