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「身近な人と死について話すきっかけにしてもらえたら」。看護師で漫画家の明さんが新刊 『いのちの教室』で伝えたかったこと

『いのちの教室  あなたの最期が私に教えてくれたこと』が、10月26日(水)に発売されます。
本作は、「よみタイ」の人気連載(2021年8月から2022年8月。全13話)をまとめた1冊。
『漫画家しながらツアーナースしています。』シリーズで知られる漫画家で看護師の明さんが、病棟看護師として働いていた経験の中から考えた死生観を、独自の視点で描くヒューマンエッセイです。
本書の刊行を記念して、著者・明さんのインタビューをお届けします。本作に込めた想いや制作秘話から、プライベートの「推し活」についてまで、たっぷりと語っていただきました!
(構成/よみタイ編集部)

漫画を描くことが心の整理に

――『いのちの教室  あなたの最期が私に教えてくれたこと』の大きなテーマの一つに「看取り」があります。このテーマで作品を描こうと思われたきっかけはどのようなものだったのしょうか。

もともと看護師をしていることもあり、漫画を通して看護について伝えたいという思いがずっとありました。「ツアーナース」シリーズを描いて、次はどのように看護について描こうか考えた時に、「死」という誰もが経験することをテーマにするとわかりやすくて伝わりやすいのではないかな、と。
あと、自分が祖母や祖父の死を経験して気持ちが落ち込んでいる時だったので、この話を描くことが心の整理にもなるのではないかと思いました。

――つらい出来事を思い出しながら描くのは、精神的負担もあったのでは?

私は精神医療や心理学の専門家ではないので詳しくはないのですが、つらい出来事があった時は、気持ちや出来事を書き出して振り返ってみると良いということはよくいわれていて、カウンセリングなどでも使われている手法です。
落ち込みすぎている時に、一人で家にいて何もしないでいると、悲しみとか後悔とか、悪いことしか浮かんできません。でも、過去の出来事を思い出しながら書き出していくと、悪かったことだけではなくて、良かったことや楽しかったことも思い出してきます。
私の場合は、漫画制作を通して、その時自分が感じたこととか、良い面も悪い面も思い出しながら描いていく時間を無理矢理にでも作ったことが、心のリハビリになったと感じています。
実際、連載が始まった当初は、祖父母が亡くなって寂しすぎて、ご飯が食べられないほど落ち込んでいました。漫画を描きながら、生きているうちにやってあげたかったのにできなかったことが思い出されて、わーっと涙が出てくることもあったんです。デスクに飾っていた祖父母の写真を見るのもつらすぎたので、しまい込んでしまって……。でも、13話を描き終えたあたりで、「そろそろ出そっか」という気持ちになって、デスクに写真を戻しました。
漫画で祖父母の死について描くことが、自分にとって一つの区切りになったのかなと思います。そういう意味でも描いて良かったと思える作品です。

――今作の中で、特に思い入れが強いエピソードはありますか。

ひとつ挙げるとしたら、やっぱり1話の「仙田さん」のエピソードになると思います。本当の意味で初めて死というものを実感した経験でした。人がいなくなるってこんなに寂しくてつらいことなんだと、ぐわっと心に迫ってくるような……。仙田さんとの経験によって、いつかお別れがくるかもしれない目の前の患者さんをどう看護すればよいか、いつか終わる自分の人生をどう生きればいいか、考え方や向き合い方が変わったと思います。

「第1話 生とは死とは」より。
「第1話 生とは死とは」より。
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みん●看護師&漫画家。過去作にGANMA!『LICHT-リヒト-』Ming短編集①~③。また看護師コミュニティサイト「看護roo!」に『ナースの力』掲載。ツイッター @rikukamehameha

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