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Jリーグ開幕! 昨季のMVP家長昭博が語る王者フロンターレと自身の現在地

「優勝を経験してまた違う壁がやってきている気がする。 でもタイトルは全部獲りたい!」(撮影/黒田史夫)
「優勝を経験してまた違う壁がやってきている気がする。 でもタイトルは全部獲りたい!」(撮影/黒田史夫)

常に論理的な自分と動物的な自分がいる  

川崎への移籍を決めたのは、「単純にタイトルを獲れるチームに行きたいという思いがあった」からだった。

彼と話していてすぐに気がついたのは、自分に対して、突き放したような視線を持っていることだ。

子どもの頃の“伝説”についても、こう笑い飛ばした。

「そういうのって、みんな話を盛るじゃないですか。僕は自分のことを客観的に見ているんですけど、そんなに飛び抜けていなかった。小学校でも躯(からだ)も大きくなかった。走るのとかも、いろんな分野でほとんど一番ではなかった。トータル的に出来た感じで」

ガンバ大阪のジュニアユースに入ったときも、内心は圧倒されていたのだと微笑んだ。

「大阪のサッカー人口と京都のサッカー人口って倍ぐらい違う。レベルも必然的に違う。大阪のチームに行ったとき、萎縮した記憶があります。そのときって、(成長の度合いが違うので)体格の差って激しいじゃないですか。僕はそんなに恵まれていなかったので、競争できるように頑張りました」

家長はユースから昇格したガンバ大阪を振り出しに大分トリニータ、セレッソ大阪、スペインのマジョルカ、韓国の蔚山現代などを渡り歩いてきた。

「僕自身、言葉数が多いほうではないし、いつも最初はなじむのに苦労します。早く溶け込もうとか、自分のストレスになるようなことはあまりしない。ただ、本当に真面目にやっていたら、いつかみんな自分のことを分かってくれるし、周りのことも分かってくる」

家長の持ち味は、ドリブル、ミドルシュートのほか、ゴールにつながる味方への鋭いパスである。パスを合わせやすい選手、合わせにくい選手はいるのかという質問をすると、首を振った。

「なんとなく感覚で分かる(選手)というのはありますけど、合わないというのはないです。合う、合わないという言い方をすると、遮断する感覚があるじゃないですか。ああして欲しいんやろうな、こっちのほうがええんかなというのが分かるときもあります。サッカーって足でやる競技なんで、(思ったところにボールが行かないため)合わない部分が多い。回数だとか一緒にいる時間だとかが大事かなと」

彼は質問に対して答えを急がず、しっくりくる表現を探す。彼の取材嫌いというのは、若くから注目された選手に特有の、言葉の怖さを知っているからだろう。チームでの信頼関係を構築するのに大切なのは、日々の練習、そして公式戦を重ねることだと言った。

「毎日練習する中で、味方の動きがつかめてくる。そして、いつも練習でやっていることを試合でやる。練習試合と比べると公式戦のほうが数倍、感覚的に研ぎ澄まされているじゃないですか。公式戦の緊張感、切羽詰まった中でやっていくことで分かってくるものがある。(試合を重ねるうちに)だいたいこのタイミングで走ってくれるだろうなというイメージが出来るようになる」

彼が試合中に重視しているのは、“バランス”である。

「(どこにパスを出せばいいのかと)物事を(論理的に)組み立てて考えている自分と、本能でやっている自分がいる。頭も使うんですけれど、動物的な部分も使わないといけない。(その割合は)半分半分ぐらいですかね」

(次ページに続く)

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田崎健太

たざき・けんた●1968年3月13日生まれ、京都市出身。ノンフィクション作家。早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て作家に。著書に『此処ではない何処かへ 広山望の挑戦』 (幻冬舎)、『ジーコジャパン11のブラジル流方程式』 (講談社プラスα文庫)、、『偶然完全 勝新太郎伝』(講談社)、『維新漂流 中田宏は何を見たのか』(集英社インターナショナル)、『球童 伊良部秀輝伝』(講談社※ミズノスポーツライター賞優秀賞)、『真説・長州力 1951-2018』(集英社)。『電通とFIFA サッカーに群がる男たち』(光文社新書)、『真説佐山サトル』(集英社インターナショナル)、『ドラガイ』(カンゼン)など多数。最新刊は『全身芸人』(太田出版)

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