2019.2.22
Jリーグ開幕! 昨季のMVP家長昭博が語る王者フロンターレと自身の現在地
常に論理的な自分と動物的な自分がいる
川崎への移籍を決めたのは、「単純にタイトルを獲れるチームに行きたいという思いがあった」からだった。
彼と話していてすぐに気がついたのは、自分に対して、突き放したような視線を持っていることだ。
子どもの頃の“伝説”についても、こう笑い飛ばした。
「そういうのって、みんな話を盛るじゃないですか。僕は自分のことを客観的に見ているんですけど、そんなに飛び抜けていなかった。小学校でも躯(からだ)も大きくなかった。走るのとかも、いろんな分野でほとんど一番ではなかった。トータル的に出来た感じで」
ガンバ大阪のジュニアユースに入ったときも、内心は圧倒されていたのだと微笑んだ。
「大阪のサッカー人口と京都のサッカー人口って倍ぐらい違う。レベルも必然的に違う。大阪のチームに行ったとき、萎縮した記憶があります。そのときって、(成長の度合いが違うので)体格の差って激しいじゃないですか。僕はそんなに恵まれていなかったので、競争できるように頑張りました」
家長はユースから昇格したガンバ大阪を振り出しに大分トリニータ、セレッソ大阪、スペインのマジョルカ、韓国の蔚山現代などを渡り歩いてきた。
「僕自身、言葉数が多いほうではないし、いつも最初はなじむのに苦労します。早く溶け込もうとか、自分のストレスになるようなことはあまりしない。ただ、本当に真面目にやっていたら、いつかみんな自分のことを分かってくれるし、周りのことも分かってくる」
家長の持ち味は、ドリブル、ミドルシュートのほか、ゴールにつながる味方への鋭いパスである。パスを合わせやすい選手、合わせにくい選手はいるのかという質問をすると、首を振った。
「なんとなく感覚で分かる(選手)というのはありますけど、合わないというのはないです。合う、合わないという言い方をすると、遮断する感覚があるじゃないですか。ああして欲しいんやろうな、こっちのほうがええんかなというのが分かるときもあります。サッカーって足でやる競技なんで、(思ったところにボールが行かないため)合わない部分が多い。回数だとか一緒にいる時間だとかが大事かなと」
彼は質問に対して答えを急がず、しっくりくる表現を探す。彼の取材嫌いというのは、若くから注目された選手に特有の、言葉の怖さを知っているからだろう。チームでの信頼関係を構築するのに大切なのは、日々の練習、そして公式戦を重ねることだと言った。
「毎日練習する中で、味方の動きがつかめてくる。そして、いつも練習でやっていることを試合でやる。練習試合と比べると公式戦のほうが数倍、感覚的に研ぎ澄まされているじゃないですか。公式戦の緊張感、切羽詰まった中でやっていくことで分かってくるものがある。(試合を重ねるうちに)だいたいこのタイミングで走ってくれるだろうなというイメージが出来るようになる」
彼が試合中に重視しているのは、“バランス”である。
「(どこにパスを出せばいいのかと)物事を(論理的に)組み立てて考えている自分と、本能でやっている自分がいる。頭も使うんですけれど、動物的な部分も使わないといけない。(その割合は)半分半分ぐらいですかね」
(次ページに続く)