2019.2.22
Jリーグ開幕! 昨季のMVP家長昭博が語る王者フロンターレと自身の現在地
うまい言葉では気持ちは絶対に動かない
言葉を使って自分の存在を積極的に知らしめようとするアスリートと、そうでないアスリートがいる。ビジネス面、集客、競技の普及を考えれば、前者は貴重である。ただ、僕のようなへそ曲がりは、口の重い後者に心を惹かれることがある。もちろん、飛び抜けた力を持ったアスリートに限って、ではあるが。
例えば、昨シーズン、JリーグMVP(最優秀選手賞)を獲得した、川崎フロンターレの家長昭博である。
32歳の彼はすでに“伝説”のような話に包まれている。同じ京都府長岡京市出身、6歳下の宇佐美貴史(現・デュッセルドルフ)は小学生のときに家長の足技を見て衝撃を受けたという。ガンバ大阪のジュニアユースでは、東口順昭(現・ガンバ大阪)、本田圭佑(現・メルボルン)と同期だった。東口は家長には敵わないと悟り、フィールドプレーヤーを諦めてゴールキーパーになった。同じ左利きの本田は家長に押し出される形でサイドバックなどに回されている。そしてユースに昇格できず星稜高校に進学した――。
早くから光り輝く存在だったにもかかわらず、家長に関する記事は驚くほど少ない。
「取材があまり好きではないと聞きました」
取材場所に姿を現した家長に話し掛けると、彼は表情を変えずに「はい」と短く答えた。ぶっきらぼう、ではない。普通に挨拶するような調子だった。彼が大宮アルディージャから川崎に加入したのは、2017年シーズンのことだ。16年シーズンの終わり、川崎から獲得の打診を受けたという。
「単純にいちサッカー選手として、ほかのチームから声を掛けられるのはうれしかったです。ただ、大宮との契約は残っていたので、それをまっとうするか、移籍するか」
家長は14年シーズンから大宮に在籍していた。この年、大宮はJ2に降格するも、一年でJ1へ再昇格。16年シーズンはJ1で5位に躍進していた。リーグ戦で11得点を挙げていた家長は、チームの中心的存在だった。
「いつもそうなんですけど、契約内容、来季の編成とかいろんなことを聞いて考えないといけない」
川崎側から心が動く誘い文句があったのか、と訊ねると「いや、ないです」と一瞬、口元が緩んだ。
「みんないろいろとうまいこと言うじゃないですか。誰に何と言われても、そういうのでは気持ちは動かないです」
悪戯っぽい笑みを見せた。
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