2020.8.14
お世話になった葬儀屋さんから受けた「注意」

私の父は、半年前に亡くなりました。
実はその時、お世話になった葬儀屋さんから、こんな注意を受けたのです。
「ご遺骨は良きタイミングでお墓に納骨してくださいね。ずっと家に置いておかない方がいいですよ」
いったいどういうことでしょう。「あまり他で言わないでほしいのですが」と前置きされ、彼の体験談を語ってくれました。うちの隣に住んでいたNさん一家にまつわる話です。
「Nさんたちが亡くなられたのは、もちろんご存じですよね」
確か三年前、隣のお婆さんが亡くなりました。その葬儀を担当したのも、彼だったそうです。
ところが家のご主人、つまりお婆さんの息子は、火葬後の骨壺を、いつまでもお墓に入れなかったそうです。よほど母親への愛情が強かったのか、ずっと手元から離さなかった。
N家の奥さんから相談を受け、葬儀屋さんはそのことを知りました。
「奥さんとしては、義母の骨を置いておくのは構わないと言ってました。嫁姑の仲も良かったし、納骨はいつでもいいのだけど、一つ、どうしても気になることがある、と」
──夜になると、骨が鳴るんですよ。カタカタカタカタ……。壺の中で骨のかけらがこすれ合うような音がして。袋の中で、骨壺が震えているんです……。
「旦那さんが亡くなったのは、その話を聞いた一か月後でしたね」
それは私も覚えています。N家のご主人は交通事故で死んでしまいました。車の行きかう路上に、ふらふらと飛び出していったそうです。母親を失ったことによる疲れか、覚悟の自殺なのか、どうなんだろうねえ、と近所の人は噂していました。
