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設置されては撤去されるブランコの秘密
めくるたび、どんどん怖くなる。 『一行怪談』で知られる吉田悠軌さんの書き下ろし怪談集『日めくり怪談』から選りすぐりのお話をご紹介します。 1日5分の恐怖体験をお楽しみください。

設置されては撤去されるブランコの秘密

 ブランコが何度も消えたり現れたりするなんて、聞いたことないですよね?
 でも僕の近所の公園では、そうなんです。
 あ、言い方が悪かったけど、ブランコが消えること自体は、別に怪現象じゃないですよ。
 子どもの安全のため、役場の公園管理課が撤去するからです。
 というのも、それがまたよく事故の起きるブランコだからでして。
 
 僕が小学生の時も、ブランコに乗っていた同級生が怪我をしました。
 いきなり地面に滑り落ちて、勢いのついたブランコが頭に激突したんです。
「誰かに下から足をひっぱられた」
 当時の彼は、そう主張していました。
 いや、そんなのありえないだろう。僕も幼いなりに、そう思いましたよ。地面から手でも伸びてきたってのか? ばかばかしい。
 ただ、それから少しして、他ならぬ僕が同じようにブランコから落ちてしまいました。
 いつも通り遊んでいたら、急に「ぎゅっ」と足首をつかまれた感触がして、そのまま、地べたまで引きずり下ろされたんです。もちろん周りには誰もいませんでした。
 
 同じような目にあう子どもたちは、昔からたいへん多かったそうです。
 さすがに危険だということで、僕が負傷した直後、ブランコは撤去されました。
 そして、これまた変な話ですが。
「これで何度目の撤去かわからないね」
 などと大人たちが呟いていたのも覚えています。そのブランコは撤去されても、しばらくしてまた同じ場所に設置される、というのを繰り返しているのです。
 なんでも町に一人、うるさいお婆さんがいて、ブランコを戻せとクレームを入れているそうです。お婆さんの家は地元の名家なので、役所も言うことを聞かざるを得ないのだとか。ここは田舎なので、そういうこともあるかもしれません。
 でも、お婆さんはなぜ、そんなにブランコにこだわるのでしょうか?
 

(イメージ画像/写真AC)
(イメージ画像/写真AC)
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新刊紹介

吉田悠軌

よしだ・ゆうき
1980年東京都出身。怪談、オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。オカルトスポット探訪マガジン『怪処』編集長。実話怪談の取材および収集調査をライフワークとし、執筆活動やメディア出演を行う。
『怪談現場 東京23区』『怪談現場 東海道中』『一行怪談』『禁足地巡礼』『日めくり怪談』『一生忘れない怖い話の語り方 すぐ話せる「実話怪談」入門』『現代怪談考』『新宿怪談』『中央線怪談』など著書多数。

Xアカウント @yoshidakaityou

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