2021.7.4
設置されては撤去されるブランコの秘密
ブランコが何度も消えたり現れたりするなんて、聞いたことないですよね?
でも僕の近所の公園では、そうなんです。
あ、言い方が悪かったけど、ブランコが消えること自体は、別に怪現象じゃないですよ。
子どもの安全のため、役場の公園管理課が撤去するからです。
というのも、それがまたよく事故の起きるブランコだからでして。
僕が小学生の時も、ブランコに乗っていた同級生が怪我をしました。
いきなり地面に滑り落ちて、勢いのついたブランコが頭に激突したんです。
「誰かに下から足をひっぱられた」
当時の彼は、そう主張していました。
いや、そんなのありえないだろう。僕も幼いなりに、そう思いましたよ。地面から手でも伸びてきたってのか? ばかばかしい。
ただ、それから少しして、他ならぬ僕が同じようにブランコから落ちてしまいました。
いつも通り遊んでいたら、急に「ぎゅっ」と足首をつかまれた感触がして、そのまま、地べたまで引きずり下ろされたんです。もちろん周りには誰もいませんでした。
同じような目にあう子どもたちは、昔からたいへん多かったそうです。
さすがに危険だということで、僕が負傷した直後、ブランコは撤去されました。
そして、これまた変な話ですが。
「これで何度目の撤去かわからないね」
などと大人たちが呟いていたのも覚えています。そのブランコは撤去されても、しばらくしてまた同じ場所に設置される、というのを繰り返しているのです。
なんでも町に一人、うるさいお婆さんがいて、ブランコを戻せとクレームを入れているそうです。お婆さんの家は地元の名家なので、役所も言うことを聞かざるを得ないのだとか。ここは田舎なので、そういうこともあるかもしれません。
でも、お婆さんはなぜ、そんなにブランコにこだわるのでしょうか?