よみタイ

「産め、働け、そして輝け」は簡単じゃない。女性が仕事をしていく上で、大切なこととは。

「産め、働け、そして輝け」は簡単じゃない。女性が仕事をしていく上で、大切なこととは。

『かたづの!』を、ビジネス小説として 読むと……

浜田 ところで先日、中島さんの小説『かたづの!』が里中満智子さんの絵で漫画化されましたね。小説もものすごく面白く拝読しました。史実を基にしたお話ですが、ビジネスものという見方もできると思って。

中島 えっ! どんなところが?

浜田 領主の夫を亡くした祢々ねねが、故郷を守るために女大名になって孤軍奮闘する物語ですが、彼女が管理職の女性に見えてきたんです。祢々は自分の領土をねらう叔父の策謀に翻弄(ほんろう)されますが、娘婿という参謀を得て上手に立ち回っていく。女性が管理職になった場合も、彼女のように若くて賢い男性の部下を持つとうまくいくことが結構あるんです。

中島 なるほど、そうなんですね。

浜田 私も管理職になったとき、同世代より下の男性社員がすごく味方になってくれました。なぜなら、私も彼らも新しいことをしたいと思ったから。私がアイディアを話すと「こういうクライアントがいます」とか「だったらこうやりませんか」とか、いろいろな案を持ってきてくれたんです。『かたづの!』を読んでそのことを思い出しました。

中島 すごい! 今までそんな読み方をした人はいませんでした(笑)。

中島京子著『かたづの!』(集英社文庫)
中島京子著『かたづの!』(集英社文庫)
コミック版『かたづの!』(絵/里中満智子 集英社)
コミック版『かたづの!』(絵/里中満智子 集英社)

浜田 祢々は国替えも余儀なくされますが、それについての娘婿のアドバイスがまたよかった。彼の頭にあった自分たちの将来は、祢々が考えていたものよりはるかに大きかったですよね。私はつねづね男性より女性のほうが正義感は強いと思っていますが、組織ではそれをストレートに出すとうまくいかないことが多い。将来のゴールを設定したら、多少正義感に反しても根回しをすること、時間をかけて冷静に戦術を考えることが必要なんです。そしてそれが得意なのは、男性のほうだなあと感じることが多かったです。

中島 祢々は羚羊かもしかや河童や猿回しといった者たちの力を引き入れますが、いろいろな立場の者たちを生かすのは女性のほうが得意かもしれないですね。

浜田 そう、男性は人物よりポジションを重視しがちだから。

中島 ダイバーシティ(多様な人材を積極的に活用しようというやり方)が大事ということですよね。「なぜ組織に女性が必要なのか」と言われることがありますが、男性にはない発想ができるからだと思います。女性に限らず、LGBTの人でもいいし、外国籍の人でもいい。企業が新しいことをしたいと考えるなら、新しい血を入れるべきでしょうね。

浜田 もうひとつ私が深読みしたところがあって(笑)、祢々が最初抵抗した国替えは「左遷」という見方もできる。「不本意な場所に赴任したら、荒れていたけれど立て直し甲斐があって、そこで力を発揮して本社復帰」みたいな話は実際よくあるんです。つまり、自分が向いていると思うことをずっとやるのではなく、「お前、こっちをやってみたら」と言われたらやったほうがいい。必ず発見があると思います。

中島 自分では全く意識していませんでしたが、『かたづの!』ってチーム作りのお手本であり、企業小説としても読めるんですね(笑)。
浜田 若くて優秀な男子を味方につける。この小説を読んで、女性管理職が組織で生き残る道はそれだと確信しました(笑)。

構成・文/山本圭子
撮影/chihiro.

◆浜田敬子さんの特集対談③はこちらから→https://yomitai.jp/special/hamadakeiko-03/

1 2 3 4

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

新刊紹介

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

浜田敬子

はまだ・けいこ●1966年山口県生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業後。朝日新聞社に入社。前橋、仙台支局を経て、93年に「週刊朝日」編集部、99年に「AERA」編集部へ。06年に出産し育児休業取得。2014年に女性初のAERA編集長に就任。その後、総合プロデュース室プロデューサーを経て、17年に退社し、「Business Insider Japan」統括編集長に就任。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」やTBS「あさチャン!」「サンデーモーニング」などでコメンテーターを務める他、「働き方」などのテーマでの講演も多数行なっている。

中島京子

なかじま・きょうこ●1964年東京生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。早稲田国際日本語学校、出版社勤務を経て1996年にインターンシップ・プログラムスで渡米。翌年帰国、フリーライターとなる。2003年『FUTON』で小説家デビュー。2010年『小さいおうち』で第143回直木三十五賞受賞。14年『妻が椎茸だったころ』で第42回泉鏡花文学賞受賞。15年『かたづの!』で第3回河合隼雄物語賞・第4回歴史時代作家クラブ作品賞・第28回柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞、『長いお別れ』で第10回中央公論文芸賞・第5回日本医療小説大賞をそれぞれ受賞。

週間ランキング 今読まれているホットな記事