2024.8.4
どんな人でも不安やネガティブ思考からは一生解放されることはない。その上でどう生きるか? 【佐久間宣行新刊『ごきげんになる技術』試し読み】
どんなにキャリアを積んでも、仕事で成功しても不安や悩みからは解放されることは一生ない。
だとしたら、それを踏まえてどう生きていくかを自身の経験を踏まえて記した1冊になっています。
ここでは、本書の導入部分、要のコンセプトを記した「序章 ごきげんの正体」を公開。
この機会にぜひご一読ください。
(構成/「よみタイ」編集部)
序章 「ごきげんの正体」
ごきげんとは、ブレないメンタルのこと
「ごきげんに生きよう」
いつの頃からか、これが僕の人生のテーマとなりました。
「ごきげん」というと、いつもニコニコしていて感じがいいとか、気持ちが弾んでいる状態、といったイメージがまず思い浮かぶかもしれません。けれど、僕の中ではちょっと違います。
ごきげんとは「メンタルが安定していて、ブレない軸がある」という状態のこと。その人が持っている生まれつきの素質や性格とは関係がないし、ましてやポジティブ思考によってもたらされるものでもない。コントロールできるものだと考えるようになりました。
こう書くと、人としての器ができていたり、何事にも動じない強いメンタルを兼ね備えているかのように思われるかもしれませんが、当然ながら全くそんなことはありません。
本来、僕はネガティブな人間です。物事を悲観しがちだし、自分を低く見積もるあまりマイナス思考に陥ることも多い。それゆえに、時間をかけて悩みながら自分と向き合い、いろいろな失敗から自分を深く知り、上手な付き合い方を探してきました。
ごきげんでいることは、たとえるならば体調を整えることと同じようなもの。風邪をひきそうな予感がしたら、加湿器をつけたり、うがいをして喉のケアをする。こういったことと同じ感覚です。
自分の中にあるネガティブな感情や思考に気がついたら、蓋をするのではなく、心の声に耳を傾け、闇落ちする前にちゃんとケアをする。内省と正しい対応を繰り返すことで、感情に振り回されないメンタルを手に入れられるんだと思います。
「佐久間はずっと態度が変わらないよなぁ」
学生時代の友人と話しているとよく言われます。
「怒鳴ったりすることはもちろん、不機嫌なところも、怒ったところもあまり見たことがない」
仕事仲間からこんな風に言ってもらえることも、少しずつ増えました。
今、周りからこう受け止めてもらえているとしたら、ネガティブな僕なりにストレスの上手な逃し方や、人間関係のハレーションを回避する方法、感情との向き合いを身につけてきた賜物だと思っています。
実際にごきげんであることで、生きやすくなるし、多くのメリットをもたらします。
周りを見回しても、少なくともごきげんに見える人は他人に嫌な印象を与えないから人間関係がスムーズだし、部下や上司からの信頼を勝ち取っている人も多い。
最近、トップクラスにごきげんな人とは「この人のために頑張りたい」という気持ちになる人なんじゃないか、と思うんです。
そんなレベルまで人間性を磨くことができたら、もっとワクワクするような仕事もできそうじゃないですか。だから僕も「トップ・オブ・ごきげん」の座を目指して引き続き日々邁進中なのです。
ポジティブ思考は心のドーピング!?
ごきげんというと、物事を何でもポジティブに捉えなければならないと考える人が多いかもしれません。
気をつけたいのは、常にポジティブであろうとすると、実はごきげんな状態からどんどん遠ざかってしまうというパラドックスです。
僕はポジティブ思考の人と、筋トレして自らをストイックに追い込んだり、ダイエットで美しい体形をキープできる人は、とても似ていると思っています。
スタートしてから一定の期間は誰もがモチベーション高く取り組める。だけど月日が経過しても、モチベーションを維持できる人は案外少ないもの。努力し続ける強い精神や、成功体験といった根拠に基づいた自信がないと、結局は挫折してリバウンドしてしまうのです。
そもそも人間には、悲しみや怒り、不安など、それが発端になるネガティブ思考が常に付いて回ります。そして、ネガティブ思考によって感情はアップダウンする。
こういうデリケートな感情を無視したり、ポジティブ思考で上書きしようとすることは、本心に蓋をしたり、自分に嘘をつくことにもなりかねない。ネガティブからポジティブへのギアチェンジには、膨大なエネルギーも使わなきゃいけないから、ますますしんどいはず。ブレないメンタルを持つこととは違うベクトルに向かってしまいます。
ポジティブ思考とは「脳汁」とも言える気分の高揚や幸福感をもたらす、一種の自己暗示のようなもの。いっときは自己肯定感が高まった気分にはなるけど、そうそう長くは続かない。維持するには、それなりの気合いが必要になります。
ポジティブ思考を常に保ち、成長できるのは、不屈の精神と行動力を持ち合わせたトップアスリートや、小学生の頃から大人になるまで競争で負け知らずの超エリート、あるいは天賦の才能に恵まれたひと握りの人間(ただ、エリートも天才も、一度挫折を味わうとあっという間にネガティブ沼に落ちてしまうという可能性はなきにしもあらず、ですが)。
つまり、ごく一部の精鋭だけ。そう割り切ったほうが気持ちがラクになるし、自分らしくいられると思います。