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麻布競馬場みたいな小説は誰だって書ける、と思わせる凄さ【アザケイ×山下素童 対談】

かとうゆうかさん、登場

──実は本日、シークレットゲストとして執筆者の一人、かとうゆうかさんにお越しいただいています。もしよかったら、かとうさんの方からお二人にご質問を投げかけてください。

かとうゆうか(以下、かとう) こんにちは。かとうゆうかです。普段はマーダーミステリーを作っています。えっと、じゃあまずは素童さんに質問。素童さんから見て、港区ってどんな街ですか?

山下 僕は港区、全然行ったことなくて。だからゴールデン街に来る港区おじさんしか知らないんですけど、とにかくダジャレを言うときの量と速さがすごい。

麻布 だいぶ偏ったおじさんが来てるな(笑)。

かとう でもいますよね、そんなおじさん(笑)。

山下 そういう港区おじさんって大概、女の人を連れて歩いてるんです。でも、彼女たちもそんなダジャレになんの反抗もすることなく、ただただ一緒にダジャレを言ってるだけ。それでいて全然楽しそうじゃない。あのダジャレの量とスピードと、そのつまらなさに抗おうともしない空気は特殊だと思います。

麻布 権力構造があるんですね。

かとう きついですね……。ダジャレってどんなダジャレ?

山下 もはや再現できないレベルでつまらないやつです。

麻布 あと豆知識おじさんとかもいますよね。どこどこのお店のシェフはどうのこうの……みたいな。

かとう 教えてあげるよおじさんみたいな人ですね。

麻布 そうそう。マンスプ(マンスプレイニング)おじさんってやっぱり多いんですよ。権力構造があるところには必ずいる。で、面白くもないダジャレを平気で浴びせる。

かとう つらい(笑)。実在するんですね……。それじゃあ、次は麻布さんへの質問。私、麻布さんの「東京クソ街図鑑」が大好きなんです。あの作品で麻布さんはいろんな街をディスってますよね。せっかくだから私が一番長く住んだ街、東新宿もディスっていただけませんか?

麻布 東新宿か……懐かしいな。世のなかには「キャバ嬢マンション」(入居にあたっての審査などで夜職関係者が弾かれづらく、結果的に夜職関係者ばかりが住んでいるマンション)というのが存在するんですよね。南長崎とか椎名町とかに建ってるんですが、東新宿のキャバ嬢マンションにはまたちょっと特殊な人たちが住んでるんです。僕は昔、新宿の特殊なお店でバイトしてたことがあって、そのとき、界隈のガールズバーの店員がよくお客さんで来てたんです。そのうち仲良くなって一緒に飲んだりしてたんですが、その人いわく「東新宿に住んでるキャバクラやガールズバーの人って他のエリアと比べられないぐらいキャストが飛ぶ」らしいんですよ。何も言わずに。だから東新宿は100人ぐらい外から人が流れ込んだら、別の100人が流出する。人口がたぶんずっと増えない。常に流動性があり、常に顔ぶれが変わる。そんな街です。

かとう 説得力がある(笑)。

麻布 とても思い入れのある街です(笑)。

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新刊紹介

麻布競馬場

あざぶけいばじょう
1991年生まれ。慶応義塾大学卒業。
著書に『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』(集英社)、『令和元年の人生ゲーム』(文藝春秋)。

Twitter@63cities


(イラスト:岡村優太)

山下素童

1992年生まれ。現在は無職。著書に『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』『彼女が僕としたセックスは動画の中と完全に同じだった』。

Twitter@sirotodotei

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