2020.11.12
オーストラリアの荒野521キロを走り抜く! 収入も語学力もない男が「地球上もっとも過酷なレース」に挑んだ理由
アドベンチャーマラソンとは、砂漠、荒野、山岳、氷雪、ジャングル……世界の極地を舞台にした“世界でもっとも過酷”なレース。ランナーは寝袋や食料などを背負いながら、数日間かけ数百キロの道程を走り、タイムを競います。
そんな過酷なレースに、日本唯一のプロアドベンチャーランナーとして挑み続けているのが、北田雄夫さん。10月に発売された『地球のはしからはしまで走って考えたこと』は、北田さんが日本人として初めて世界7大陸を走破するまでや、その後、4大極地最高峰レースに挑戦する様子をまとめた本人初の著書。
今回のその本の中から、著者にとって思い入れの強いレースだったという、日本人初参加の2015年、オーストラリアの荒野での「The Track(ザ・トラック)」への挑戦(単行本の3章)を全3回に分けてお届けします。
自らを「ビビり」「英語も苦手」という北田さん。それなのになぜ、あえて海をわたり、過激すぎる試練に立ち向かい続けるのか……。その強さの秘密や、レースの舞台裏が明かされます!
今回の第1回は「準備編」。アドベンチャーマラソンの戦いは準備から始まっている! 日本にいるうちから様々な苦労があるようで……。
※書籍から一部抜粋・再編集しています。
(構成/よみタイ編集部)
日本人初参加のオーストラリア大陸のレース
2014年3月、初めてのアドベンチャーマラソン挑戦となった中国ゴビ砂漠の「Gobi March(ゴビ・マーチ)」を完走した僕は、同年10月、チリの「Atacama Crossing(アタカマ・クロッシング)」にも挑戦した。標高3200メートル、最高気温45℃というアタカマ砂漠で開催される7日間、6ステージ250キロのレースだ。熱中症や脱水症状のトラブルもあったが、結果165名中64位、48時間39分20秒で完走できた。これでアジアと南米、2大陸のアドベンチャーマラソンを走破した。レースへの準備方法やトラブルへの対処方法も少し身につけ、砂漠でも250キロを走り抜く自信を得た。
7大陸走破に向け次なるレースはオーストラリア大陸に決めた。「The Track(ザ・トラック)」、荒野での9ステージ、521キロのレースだ。
過去2レースの6ステージ、250キロより合計距離は倍以上、各ステージの距離も長くなり、難易度は当然、高い。参加人数も数十名と少なく、日本人はいまだ参加したことがないためレースの情報もない。できればもう少し経験を積んでから臨みたい。それが本音だった。
しかし、「ザ・トラック」の開催は2年に一度。2015年の挑戦を避けると次は2017年、3年後だ。この道で勝負する決意はもう固めたのだ。スタートは30歳。7大陸走破のために長期戦は避けたい。自信がなくてもここで行くしかない。ここからが日本人初のレースに挑む、本当のチャレンジだ! 腹をくくって、エントリーを決めた。
これまでの2レースは、どちらも同じ主催者で日本事務局もあった。だから安心して臨めたのだが、次はそうはいかない。「カナル・アバンチュール」というフランスの別団体が主催し、規則やルールはもちろん、雰囲気や対応も全く異なる。そのため英語が苦手な僕にとって、このレースはウェブサイトの英語と戦うところから始まった。
参加には、英語の申込書と医師の診断書、そして心電図が必要だった。参加代金2600ユーロ(当時、約35万円)は海外の銀行に振込む。海外送金なんてしたことないし、もしも架空団体だったらどうしよう。そんな不安も多少はあったが、アダルトサイトやお金がすぐ殖えるというような詐欺的なサイトならまだしも、こんな過酷なレースへの参加希望者が世界で何人いるというのか。その手間を考えたら架空団体などありえない。送金をし、無事にエントリーできた。
2014年のチリ「アタカマ・クロッシング」挑戦の動画もぜひチェックを!