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『ルール?展』は最高のデートスポットである──SF作家・石川宗生さんのアート見聞録

東京ミッドタウン内の「21_21 DESIGN SIGHT」で開催中の『ルール?展』がSNSで話題になっています。TikTokに投稿された展示内容を紹介する動画が、170万回再生・15万いいね(2021年9月現在)と大きくバズりました。今でも連日予約枠は埋まっています。
〈ルールとポジティブに向き合う力〉を与えてくれるという展示に興味を持ったのは、昨年『ホテル・アルカディア』で第30回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞したSF作家の石川宗生さん。根っからの旅人で、世界各地のルールに翻弄されてきた石川さんは、展示される〈ルール?〉をどのように見たのでしょうか。
『ルール?展』のポスタービジュアル。「?」が気になる
『ルール?展』のポスタービジュアル。「?」が気になる

多様な視点からルールを考える

 最高のデートスポットを発見した。〈ルール?展〉だ。六本木に足を運ぶなら、口説く前でも口説いた後でも中だるみ期間でも別れかけでもデートプランに組み込むべきである。まあ、なんなら女の子同士で行ってもいい。男同士でも。いや、あなたひとりでも。なので結局は、デートじゃなくてもいいか。端的に言えば、純粋に楽しいから。

 本展のコンセプトは「私たちがこれからの社会でともに生きるためのルールを、デザインでどのようにかたちづくることができるのか、多角的な視点から探ります」とのことらしいが、実際は堅苦しいところは一切なく、至極ポップにみずからの体験でもって楽しめる内容となっている。

 たとえば入場してすぐに出迎えてくれるのがたくさんのスタンプだ。観光地とかによくある記念スタンプかしらんと思い、ためしにパンフレットに押してみたら鑑賞のルールを決めるためのスタンプであった。「あらゆる線をふんではならない」「どこかでしゃがまなければならない」「3びょうかん目をとじてから作品をかんしょうしなければならない」「歩き出すときは右足からふみださなければならない」などなどの12種類で、実際に押してみるまでそのスタンプのルールが何であるか分からない仕組みになっている。このなかからランダムに二つのスタンプを押して、そこに書かれているルールをみずからに課して本展を見て回るという趣向だ。

どのスタンプを押すかで、鑑賞の仕方が変わってしまう!
どのスタンプを押すかで、鑑賞の仕方が変わってしまう!

 なるほどたしかに挙動のおかしな来場者がちらほらいる。走り幅跳びでもする気かと疑ってしまうほど勢いよく歩いている人がいると思ったら、内実「ふだんより大きな歩はばで歩かなければならない」のルールだったり。軽やかな足取りでやけに陽気なハミングをかましている人がいると思ったら、それは「はなうたを歌わなければならない」であったり。だいたいの来場者はきゃっきゃと愉快に鑑賞しており、実は「きほんてきにえがおでいなければならない」というのもあったりするのだが、それはスタンプ関係なしに本展を心の底から楽しんでいるだけなのかもしれない。こんな感じで来場者を見てるだけでも面白おかしく、なんだか二度美味しいようなお得感がある。

鬼ごっこのルール?

 さて、実際の展示はというと、これまた多種多様な意匠が凝らされている。本展が行われているのは建築家の安藤忠雄氏が設計した21_21 DESIGN SIGHTというところなのだが、トイレのサイン、壁、ドアハンドル、防火装置などの規格や仕様の解説。高鬼、しっぽ鬼、影踏み鬼、色鬼といったさまざまな鬼ごっこのルールをまとめた一覧表。法令が成立するまでの一連の流れ、つまりはルールを作るためのルールの紹介だとか。そんな具合に“ルール”という認識を超えて、規格、基準、法律まで多義的な視点を包含している。本展タイトルにクエスチョンマークが入っているとおり、ルールとはなんぞやと来場者自身に問う内容らしい。

ルールによって系統図のように分類される〈鬼ごっこ〉
ルールによって系統図のように分類される〈鬼ごっこ〉
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新刊紹介

石川宗生

石川宗生
いしかわ・むねお
1984年、千葉県生まれ。オハイオ・ウェスリアン大学天体物理学部卒業。約3年間の世界放浪、メキシコ・グアテマラでのスペイン語留学など経て、翻訳者として活動。2016年、短編「吉田同名」で第7回創元SF短編賞を受賞。2018年、受賞作を含む短編集『半分世界』を刊行。2020年『ホテル・アルカディア』で第30回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。最新刊は『四分の一世界旅行記』。

Twitter @unpocomastiempo

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