2021.7.15
女の本音とあざとさが見えたとき、ストーリーが加速し始めました〜『恋と友情のあいだで』コミックス化記念! ふるかわしおり先生特別インタビュー
美月が最初に汚い感情を見せてくれた
――お気に入りのキャラクターはいますか。
基本的に平等に愛情を注いでいるので、特定のお気に入りというのはいないのですが、強いてあげるとしたら美月でしょうか。
描き始めた当初は、原作の世界観を壊さないようにしようと思うあまり、キャラクター設定にも気を使いすぎていた部分があったと思うんです。そんな中、最初に自由に動き出してくれたのが美月でした。
里奈も廉もある意味似た者同士というか、周りにこう見られたい、見せたいというところがあって、本音や汚い部分がなかなか見えてこなかったんです。
でも美月は、「実際にどうなの?」「どう思っているの?」と私が問いかけた時に、あざとさや汚い感情をわりとすぐに出してくれました。
美月が里奈に汚い部分を見せることによって、里奈も本音が出てきて、里奈と美月が初めて会う第7話あたりから勝手にキャラクターが動き出してくれて、俯瞰として見ていた登場人物の世界に私自身が踏む込むきっかけにもなったと思います。
そんな女同士のマウント取り合いのような、心の内が見えるいい流れが生まれてきた中で描いたのが、廉と美月の結婚式の回(第13話)です。里奈だったらシンプルでめちゃくちゃ高い服で行くだろうなと思って、120万円くらいする実在のドレスを参考資料にして、着せちゃいました。美月に着せたのはふんわりとした女性らしい60~70万くらいのドレスで、実は主役のウェディングドレスより参列者である里奈のドレスの方が高かったという……(笑)。
――単行本のカバーが一瞬コミックスとは思えないようなデザインなんですが、こだわったところを教えてください。
カバーは単行本の顔ですから、とても大切だと思っています。
今回は具体的に単行本化のお話が出る前から、本になるなら東京のシンボル的存在である東京タワーをカバーデザインに使いたいというイメージが頭の中にあって、東京タワーがきれいに見える場所を探し歩いたり、写真を撮ったりもしていました。
でもコロナ禍で、ロケハンや撮影が難しい状況になってしまい、実際のカバーには画像検索サイトで見つけた写真を使っています。
この画像探しがなかなか大変で……。東京タワーの写真自体はものすごく多いのですが、空から俯瞰で撮られていたり遠目に撮られていたりするものが多くて、人物を手前に置ける構図の写真がなかなか見つからなかったんです。「東京タワー 公園」「東京タワー 道路」「東京タワー 屋上」とか検索ワードを変えつつ、2日間で3万枚くらいは画像を見ましたね。もうこの間は、本当に脳内が東京タワーで埋め尽くされるような状態でした(笑)。
カバーをラベンダー色にしたのは、これが里奈っぽい色だと思ったからです。儚い、里奈の心の中の色をイメージしています。
――最後に読者へメッセージをお願いします。
この作品は、不倫も描かれているということで、抵抗感がある方もいるかもしれません。実際にお叱りの声をいただいたり、ツイッターのDMで、「大きな声では言えませんが、いつも読んでます」なんていうメッセージをいただいたりすることもあります。
私自身も、不倫は良くないことだという思いもあるのですが、一般的に「いけない」とされていることと、作品内での登場人物たちの行動をイコールで結びつけなくてもいいのではないかという思いもあって。ここでは、あくまでも里奈と廉の選択の結果として描いています。
港区女子の生態とか不倫の恋とか、リアルだと思う人にはリアルに読めるし、フィクションだと思う人にはフィクションに読める。そういう「フィクションとノンフィクションの間」を楽しめるところが、この作品の魅力ではないかと思っています。
単行本のほうはトイアンナさんにご執筆いただいた解説コラムなどもあり、書籍ならではの楽しみ方もできるようになっているので、ぜひ多くの方に手にとっていただけたらうれしいです。
ウェブ累計2000万PV超えの超人気漫画が待望のコミックス化!
あの頃のふたりをあなたはまだ覚えてる?
若さと美貌で、誰もがうらやむ暮らしと恋愛を謳歌し、きらびやかな人生に不満なんて何もないはずだったのに……。
里奈の心の奥底には学生時代からの同級生・廉の存在が常に消えなかった。
そして、それは享楽的な生活を楽しむ廉にとっても同じで……。
恋と友情と結婚と……運命に翻弄されるふたりの男女交互の目線で描かれ、多くの共感を集めた「東京カレンダー」の大ヒット小説を完全漫画化。恋愛ライター・トイアンナ氏の解説コラムも必読の、令和の恋と友情のバイブル!
単行本『恋と友情のあいだでvol.1 いつか終わる恋よりも、一生続く友情を選んだふたり』の詳細はこちらから。
第1話はこちらからお読みいただけます!→金と力のある男の相手をするのは、若く美しい女の義務だと思っていた~第1話(里奈)