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女の本音とあざとさが見えたとき、ストーリーが加速し始めました〜『恋と友情のあいだで』コミックス化記念! ふるかわしおり先生特別インタビュー

ロケハンはもちろん、レストランの内装図面まで入手して

――里奈が住む東京の港区、廉の住むシンガポールなど、実在のあちこちの街を舞台にストーリーが展開するのも本作の特徴ですね。

ある日の制作現場で、アシスタントさん3人がパリ、ハワイ、シンガポールとそれぞれ違う海外の背景を描いていて、「今どこ?」「私、パリ」「目の前にマーライオンいます!」なんて話しながら作業をしたことがあって、とても新鮮で面白かったです。

というのも、私は自分のオリジナル作品では実際に世の中にあるものをほとんど描いたことがないんです。東京とか埼玉とか場所を特定しないし、建物も、たとえば作中の人物が学校に通うなら、学校を建築するところから始めます。だからもし読んだ人から「こんな学校なんてない」と言われたとしても、「これは私が建てた学校だから、これでいいんです」と言える。
でも、今回登場するのは実在するところばかりで、それを漫画として完全に再現するのは私にとっても挑戦でした。すごく面白かったですし、良い経験をさせていただいたと思っています。

里奈と直哉が結婚後に住んでいるのは港区という設定なのですが、実は私も最近引っ越すまで6年ほど港区に住んでいたんです。なので里奈たちがご飯を食べに行く時の距離感とか、買い物に行くならこのお店だろうとか、経験からイメージしやすかったかもしれません。

でも、これははっきりと断言しておきたいのですが、私は港区女子ではありません! 超引きこもり漫画家です(笑)。
ただ、高級レストランとか豪華なホームパーティーとかを情報として調べたり眺めたりするのは好きなので、今回も、感覚としては登場人物たちの生活を俯瞰ふかんで見ながら、その様子を拾って漫画にしていったという感じです。

最近まで港区にお住まいだったというしおり先生。「でも港区女子ではありません!」(画像提供/ふるかわしおり)
最近まで港区にお住まいだったというしおり先生。「でも港区女子ではありません!」(画像提供/ふるかわしおり)

――実在するホテルやレストランも多数登場しますが、漫画化に際して、工夫されたことはありますか。

実在するものを描く場合には、ロケハンとして現地に実際に足を運ぶのが一番だとは思うのですが、昨年の春あたりからはコロナ禍でそれが叶わないことも多くなってしまいました。なので、現地に行けない場合はとにかくネットを漁りまくって資料画像を探します。そうするとお店の内装図面とかが出てくることもあるんですよ。それを参考に、この席に里奈たちを座らせて、ドアまでの距離はこのくらいだから動きは……などと考えて描いています。

コロナ禍で機会は減ったものの、状況が許せば現地取材へ。こちらは第18話で里奈が廉を待っている時に登場した渋谷のセルリアンタワーのバーのカクテル(撮影/ふるかわしおり)
コロナ禍で機会は減ったものの、状況が許せば現地取材へ。こちらは第18話で里奈が廉を待っている時に登場した渋谷のセルリアンタワーのバーのカクテル(撮影/ふるかわしおり)

廉と美月が結婚式を挙げたグランドハイアット東京のチャペルは、ホテル公式YouTubeチャンネルで360度VR動画が公開されていて、そちらを参考にしました。
公開後にホテルの方から、「このチャペルが漫画に描かれたことはなかったのでうれしかった」というコメントもいただき、とてもありがたかったです。

特徴的なチャペルデザインも見事に再現(単行本『恋と友情のあいだでvol.1』より ©️ふるかわしおり/集英社)
特徴的なチャペルデザインも見事に再現(単行本『恋と友情のあいだでvol.1』より ©️ふるかわしおり/集英社)
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ふるかわしおり

漫画家。デビュー作は『コ イ』。その後「別冊マーガレット」で連載されていた『ファイブ』が大ヒットするなど著書多数。 2020年1月24日全国劇場公開予定の映画「サヨナラまでの30分」のコミカライズを漫画アプリ「マンガMee」にて毎週木曜日更新、『ファイブ』続編【ファイブ+】を「月刊アクション」にて執筆中。
今作は小説のコミカライズに初挑戦。自身も食べ歩きやグルメが大好きで、作中に登場するレストランやお店は自ら吟味してチョイスしたものも。
Twitter @Shiori5Furukawa

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