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日経テレ東大学の仕掛人・高橋弘樹が語る、ひろゆきのスゴいポジショニングとは?

プロデューサーが自分でやるのが一番早い

──『Re:Hack』の特徴のひとつとして、横に座っているパンダの着ぐるみ「ピラメキパンダ」の発言として、高橋さん自身がボイスチェンジャーで声を変えて、ところどころ場を回していることが挙げられます。プロデューサー自身がMC的なことをするのはかなり珍しい形なのだと思うのですが、どうしてこのスタイルをされているのですか?

高橋 確かになかなかない形ですけど、やっぱりプロデューサーが自分でやるのが一番早いんですよ。その役割をアナウンサーにやってもらうのとか、意味がわからないと思ってしまいます。
もちろんアナウンサーさんが、アンカーマンとしての立ち位置で編集権を持っているニュース番組であれば、アナウンサーさんがやるべきです。でもアナウンサーが内容に関して責任も持っていないのであれば、本来インタビューとかは、制作者がやるべきじゃないですか。論点を整理しながら、適切なタイミングでちゃんと水を差すのは、内容の責任者でないと難しい。

──適切な介入というのは、確かに難しいことですね。特に『Re:Hack』は、ひろゆきさんとゲストの間で喧嘩のようになってしまう場面がありますし。

高橋 そうですね。おそらくアナウンサーさんだと、かなり早いタイミングで水を差しちゃうんだと思います。基本的に、僕はギリギリまで干渉したくない。10年以上プロデューサーをやってますし、「ここまではまだ大丈夫」というラインの感覚が、たぶんアナウンサーのかたよりも後ろに設定してあるんです。それもあって、自分で回す役もやったほうが、うまくコントロールできると思っています。
本音としては、自分の姿を出すと、普段の自由な行動を阻害させる側面もあるから、あんまり好きではないんですけどね。

──『ひろゆきと考える 竹中平蔵はなぜ嫌われるのか?』の第1章にも、「竹中平蔵は金持ちか」というパソナ株についてのやり取りで、緊張感が高まった場面がありましたね。竹中さんの「仕切ってください」という言葉が出たところで、ようやく高橋さんが仲裁の形で入ります。

高橋 僕としては、全然まだまだいけると思ってたんですけどね(笑)。竹中さんにそう言われたので、ここが潮時かなと思って介入しました。
あの場面の、二人のバトルが、本当に大事だったんですよ。激しいやり取りがあって初めて、視聴者には竹中さんの話が届くというか。だって、「竹中平蔵は自分で利益誘導してるんじゃないか」って日本中みんな思ってますもん。それに対する答えをある程度もらってからじゃないと、誰も竹中さんの話を、ストンと聞けないですよ。この番組は綺麗事を言うだけの番組じゃない、っていうのを見る人に伝えるためにも、必要な場面だった気がしますね。それに、ああやってやりあった結果、ひろゆきさんと竹中さんは仲良くなることができた。

──追加の対談の際に、高橋さんが「念のための確認なんですけど、竹中さんはアメリカのスパイなんですか?」とストレートな質問をしていたのも印象的でした。

高橋 あれも大切なんですよ(笑)。だって、竹中さんのことアメリカのスパイだって思ってる人、たくさんいますから。アメリカの政府やシンクタンクから金をもらってるんじゃないかって。それをちゃんと質問して、その結果、肯定でも否定でもどちらの答えでも良いのですが、そのときの竹中さんの表情をしっかり映す。その表情を見れば、伝わるじゃないですか。本当のことを言っている表情なのかどうか、それは視聴者が考えれば良いことで、そういう質問を僕たちはしなくちゃいけない。

──「竹中平蔵はなぜ嫌われる?」が本書のテーマですが、竹中さんが嫌われる状況は今後変わると思いますか?

高橋 竹中さんは、誰かブランドコンサルタントさん雇ったら、もっと政策が世に伝わるんじゃないかと思います。「竹中平蔵」というイメージに対して、アドバイスしてくれる人を雇うと全然違うと思う。
それは必要以上によく見せようという意味ではありません。竹中さんはそれなりにお金を持っているのに、自分が金持ちであることを否定します。それって「昭和の美徳」だったんだと思うんです。お金を持っていても質素なふりをする──それは悪いわけではない。でも時代によって美徳は変わります。そして竹中さんの美徳は決定的にずれてしまっている。今の時代、特に若い世代を中心にウェブの人たちって、「建前で話すよりリアルをさらけ出してくれ」っていう風潮が強いです。そんな風に美徳のずれが大きいのは、嫌われる大きな要因だし、それを客観的に指摘してくれる人が必要なんですよ。
こんなこと竹中さんからしたら大きなお世話だとは思います(笑)。でも「人間をどういう風に見せるか」という描き方って、マスコミの得意分野じゃないですか。その描き方だけで飯を喰っていると言えます。その立場からすると、竹中さんの振る舞いは「ちょっともったいないな」って感じます。
先日、群馬のロケに竹中さんが来てくれたんですが、喫茶店で竹中さんがオムライスを食べる場面で、「もうちょっとうまそうに食ってくれよ」って思いました(笑)。ボソッと「おいしい…」っていうんですよ(笑)。おいしいんだったらおいしいと言う。お金を持ってるなら持ってると言う、と同じです。これも大きなお世話でしょうが…。

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高橋弘樹

たかはし・ひろき
1981年東京生まれ。テレビ東京制作局プロデューサー。これまでの演出・プロデューサー番組に『ジョージ・ポットマンの平成史』『吉木りさに怒られたい』『家、ついて行ってイイですか?』『逆転無罪ミステリー』など。著書に『TVディレクターの演出術』『1秒でつかむ』など。

Twitter @takahashi_ntu

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