2021.6.26
「男性には、超えたらあかん性的『一線』がわかりづらい」南和行さん×三輪記子さん 男女のトラブル法律対談
この刊行を記念して、著者の南さんと、『これだけは知っておきたい男女トラブル解消法』(海竜社)の著者で弁護士の三輪記子さんとの“弁護士対談”が実現しました!
共に関西出身の現役弁護士であり、執筆業やタレントなど幅広く活動し、友人としても日頃から親交の深いお二人。
セクハラ、セックス、不倫……男女のトラブルのエトセトラについて、法律家の観点からたっぷりと語っていただきました。
ところどころに関西弁が混じる、性と法の赤裸々トーク、前後編2回に分けてお届けします!
(イラスト/上田惣子、構成/「よみタイ」編集部)
女性がさらされているリスクを男性は知らない
三輪記子さん(以下、三輪) 『夫婦をやめたい 離婚する妻、離婚はしない妻』の発売おめでとうございます。この作品はフィクションで登場人物にはモデルがいないということですけど、夫婦トラブルの内容や弁護士と相談者のやりとりがすっごくリアルで、「こういう相談よく来るな」と思いながら読みました。弁護士の人は「弁護士あるあるだな」という観点で読めるし、一般読者の方には「弁護士って、こんなこと聞き出しているんだな」みたいな感じで読んでもらえたらいいのかな、と。
南和行さん(以下、南) 「弁護士あるある」って言ってもらえたのはうれしいですね。この本に関して僕の自慢は、本当に全部フィクションで書いたこと。「これ先生、私のことを書きましたよね」って絶対言われません。
もちろん本に出てくる人物の感情は、今まで自分が出会ったいろんな人から受け取ったことの蓄積なんですけど、シチュエーションとか夫婦のトラブル内容は、完全にフィクションなので、それを弁護士さんに「リアルだった」と言ってもらえるとうれしいです。
三輪 もっと具体的に印象的だったエピソードについても語りたいんですけど、それを言うことは、私自身のあまり人に話したくないような経験が掘り起こされる感じなんですよ。だから正直、ここが良かったって言いにくい。逆に言えば、それだけ人が普通は触れられたくないようなことが、いろんなパターンでとてもリアルに書いてあるということで、そこがこの本の面白さだと思います。
南 それを言うたら三輪先生が書かれた『これだけは知っておきたい男女トラブル解消法』もすごい。「女の子のための」とか性別でくくるのはあまりよくないですがあえて言いますけど、この本は「女の子のバイブルだ」って本当に思ったんですよ。
南 トランス女性(生まれたときの体の特徴から振り分けられた性別は男性であるが今は女性として生活している人)の友人が「女になって生きるようになって何がびっくりしたって、女の人って街を歩くだけで危険がたくさんある」ということを言っているんです。
歩いているだけで知らん人に声かけられるとか、突然体を触られるとかって、男で生きていたらそうそうないことだと。でも女性にとってはごく日常的に起きる危険なんだと。三輪先生の本を読んで、あらためて、日本社会における女性の置かれた状況とか、女であるということで身を守らなあかん危険や罠がたくさんあるということを再認識しました。僕は男なので、そのあたりを全然わかってなかったなと、三輪先生の本を読んで思いました。
帯に書いている「女の子が生きていくときに、覚えてほしい法律のこと」というのはまさにそのとおりで、中学生・高校生の女の子全員に配りたいし、男の子にも配って、あんたらも知っておかなアカンよって言いたいような本だと思いました。
三輪 ありがとうございます。
南 特にいいと思ったのは、離婚や恋愛だけじゃなく、「婚約」を独立した章を設けて取り上げていること。見逃されがちだけど、確かに婚約トラブルってすごいあるなと思って。
婚約って、男と女の社会的な立場の違いが実はよく表れる瞬間だと思うんですけど、法律的にはあんまり保護されないケースが多いじゃないですか。結婚したらなかなか離婚できないけど、婚約の段階だったら早くに離脱できても、そこまでペナルティーはないわけですよね。そりゃ、あほみたいに結納金いっぱい払わされたとか、片方の人だけが結婚式場の予約代を高額負担したとかなら別なんですけど、たいていの場合は、「しようがないよね、結婚してないんだから」って、結婚に比べると軽く扱われてしまうところがある。だから、その婚約のリスクについてきちんと章を設けて書かれているところがさすが弁護士さんやと思いました。