2021.6.25
「コロナ離婚」は本当にあるのか? 『夫婦をやめたい 離婚する妻、離婚はしない妻』刊行記念! 著者・南和行氏特別寄稿
「よみタイ」の人気連載「離婚さんいらっしゃい」(2018年10月〜2020年4月)に書き下ろしを加えて単行本化。
「離婚する・しない」解決の道筋を、様々な夫婦の想定パターンをもとに現役弁護士が法律的見地から詳細解説した1冊です。
今回はこの刊行を記念して、著者・南和行さんの特別寄稿をお届けします。
新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの生活スタイルは大きく変わりましたが、そうした変化は夫婦関係にどのような影響を与えているのでしょうか。
現役弁護士で、離婚問題をはじめとする家事事件を多数扱う、南さんの見解は……?
(構成/「よみタイ」編集部)
離婚の相談は増えている
誰が言ったか知らないけれど「コロナで離婚が増えたらしい」みたいなこと、耳に入ってきませんか?
僕は離婚の相談がいつも多めな弁護士ですが、うーんたしかに「コロナで離婚の相談がいつも以上に増えた」気がします。コロナでガラっと変わった生活。テレワークや時差勤務で残業が減って、会社の飲み会とかも減って、夫婦そろって家にいる時間が多くなる中で、今まで漠然と抱いていた不満が、言葉で説明できるほど具体的に意識されるようになってしまった……という相談もたしかにあります。
ところが、客観的な統計によると、コロナ禍で離婚は増えていません。むしろコロナ禍で離婚は減っています。厚生労働省のホームページで公開されている、人口動態調査という統計では、1回目の緊急事態宣言が発出された令和2年4月の離婚件数は1万6493件で、その前の年の同じ月の2万3039件より6500件ほど減っています。そして、そこから先、令和3年2月まで、どの月も離婚件数は前の年の同じ月より少ないのです。つまりコロナ下で離婚は減っているのです。ちなみに令和3年3月だけは、1年前、つまりコロナ禍の「かかり」だった令和2年3月よりわずか16件だけ離婚件数が増えています。
この「コロナで離婚は増えていない(むしろ減っている)」という統計の結果、僕はどうも腑に落ちません。僕は実際の体感として「コロナ禍で離婚の相談が増えた」気がしているのに。そこで僕は「コロナ禍で離婚は増えていない。だけれどコロナ禍で離婚を考えた人は増えた。そして、考えた結果、離婚はしなかった」という仮説によって、自分の腑に落ちなさを埋め合わせたいと思います。
例えば夫に対してイラッとすることは、コロナ禍の前からずっとあって、常々、夫の言動の端々でイラッとしていた。それでもちょっと前なら、外で誰かと会って気分転換するとか、わざと一緒にいる時間を減らすようにするとか、そうやってやりすごしてきたのに、コロナ禍でやたら家にいる時間も重なるから、夫に対してマイナスの感情ばっかりが出てきてしまう。「あぁ。離婚したい」「離婚してやる」そんな言葉ばっかり思い浮かぶ。もう我慢も限界だ、「離婚したいのだけど」と、次にイラッとしたら言ってやろう……と、そこまで考えたとします。
でも、コロナ禍でやたら家に一緒にいると、かえって「離婚したいのだけど」って言うタイミングを逃してしまいませんか? お互いに昼間は仕事で外にいて、それぞれ夜や週末に家を空けることもあったほうが、一緒にいる数少ないタイミングの勢いで離婚を切り出すとか、もう顔を合わさないローテーションができあがっているからむしろLINEで事務的に離婚を伝えてしまうとか。でも、これだけ家で一緒にいたら、むしろ離婚を切り出すタイミングって、ありすぎてないみたいな、そもそも「離婚って」となってしまいませんか。