よみタイ

コロナが明けたらぜひ行きたい! 元飼育員が明かす「動物園」の魅力を120%満喫する方法

世界初の「どうぶつ科学コミュニケーター」として、講演活動やフィールドワーク、執筆活動など幅広く活動中の大渕希郷(通称・ぶっちー)さん。
「よみタイ」の連載「動物ふしぎ観察記」は5月9日配信回をもって最終回を迎えました。

この連載では様々な動物の生態が紹介されましたが、私たちが実際に動物を観察できる場所といえば、動物園です。
ぶっちーさんは、上野動物園の飼育展示スタッフや日本科学未来館の科学コミュニケーターとして働いていた経歴の持ち主。そこで今回は「動物園」をもっと深く知って楽しむ方法を教えていただきました。
本来ならこの時期は動物園を満喫するのにとてもいい季節。残念ながら今はコロナ禍で休園している施設も多いですが、状況が落ち着いて、動物園を訪れる際にはぜひ参考にしてほしい情報が満載です! 読む動物園ガイド、お楽しみください。

(聞き手・構成/「よみタイ」編集部)

動物園では「かかと」に注目!

――動物のプロである、ぶっちーさんにとって、動物園の面白さとはどういったところにあるのでしょうか。

博物館法では、動物園や水族館も博物館の一種とされています。他の美術館や博物館と特に異なるのは、展示物が本物の生き物であるということです。つまり、生きた命を扱う博物館なのです。
「百聞は一見にしかず」と言いますが、匂いや音を含めて、生きている実物を目の前で見るというインパクトに勝る経験はないでしょう。

上野動物園・両生爬虫類館の飼育展示スタッフ時代の、ぶっちーさん。(写真提供/大渕希郷)
上野動物園・両生爬虫類館の飼育展示スタッフ時代の、ぶっちーさん。(写真提供/大渕希郷)

――実物の動物を観察するコツはありますか。

園によって飼育されている動物や展示法は異なりますから、一概には言えませんが、「なぜこの動物はこの形になったのか」ということを考えながら観察すると面白いかもしれません。

たとえば、同じ「しっぽ」でも、リスとカンガルーではその形や使い方が全く違います。それぞれが歩くときに尾がどのように使われているか観察してみてください。リスは木の上を歩いたり飛び降りたりするときに尾を広げたり微妙に角度を変えたりしてバランサーとして使っています。カンガルーは上半身と尾をシーソーのように動かしながら、尾を支えにジャンプして進みます。

他にも鳥類の翼の形や縦横比や、水生哺乳類の脚や尾の形など、特定の部位に着目してその形状や使い方を比較して見ていくと、「かわいい」とか「カッコいい」から一歩進んだ発見があるはずです。

――特に注目すべき部位はありますか。

「かかと」の位置に着目してみてください。動物によっては意外な位置にかかとがあります。
たとえばウマやキリンでは、多く人が膝だと思っている部分がかかとに該当します。

蹄は指先に該当する。ひざのように見える部分がかかと。(資料作成/よみタイ編集部)
蹄は指先に該当する。ひざのように見える部分がかかと。(資料作成/よみタイ編集部)

そして、歩くときどの部分が地面についているかによって、大きく3つに分けることができます。
1つは、ヒトのようにかかとをつけて歩く動物(蹠行しょこう性動物)。ヒトやサル、クマなどが該当します。機動性にやや欠ける一方で安定感のある歩き方です。
2つ目は、指行性動物。常にかかとを上げてつま先だけで歩く動物で、イヌやネコ、タヌキが該当します。静かに忍び寄ったり、急旋回ができたり、優れたハンターの脚です。
3つ目は、蹄行ていこう性動物。かかとを上げて蹄だけつけて歩く動物でウマやキリンが該当します。指行性動物よりさらに走行性の高い脚です。

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新刊紹介

大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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