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桜木紫乃×オザワミカ いつか母に忘れられ、やがて子を忘れる母になる――絵本『いつかあなたをわすれても』刊行記念対談

『家族じまい』では描かれなかった孫娘の視点

桜木 最初の絵は、グレー・ベージュ・黒の3色使いでしたよね。まるで私のワードローブみたいだった。

オザワ 桜木さんは絶対好きだと思いました。

桜木 うん、大好きです!

オザワ ですよね。だから、「もう少し児童書に寄せた色に」と編集者さんから言われた時、実は、ひそかに悪態ついたんです(笑)。子どもなんて知ったこっちゃねー、大人に届けるんだ ー!って(笑)。

桜木 そんな話が聞きたかったんだよぉ(笑)。

オザワ でも、冷静に考えたら確かにそうだなって。児童書部門から出ることを忘れちゃいけないと思って、自分の中で切り替え、今の配色になりました。

桜木 「これしかない!」というくらい完成していますよね。

オザワ 背景の色は修正前のまま活かして、孫(わたし)と母(ママ)と祖母(おばあちゃん) の3人は、服の色を見直しだなと思ったんです。ママは、身は軽くても心にちょっと重いものがあるから少し落ち着いた色にしたかったし、おばあちゃんは解放された感じの色、孫である私は、口はあまりきかなくても、元気な何かがそこにあるような色と。色で人物を象徴するというか、色を使い分けることで、3人の世界が全然別のものであることを意図したつもりなんですが……。

3世代の「生きている世界」を色彩で表現  ©️桜木紫乃 オザワミカ/集英社
3世代の「生きている世界」を色彩で表現  ©️桜木紫乃 オザワミカ/集英社

桜木 オザワさんの絵を見て、物語を語る視点を、10 代の孫に下げて良かったって、改めて思いました。とくにカバーの女の子の横顔! あの横顔は、 手にとった人全員が持っている横顔だなって。

オザワ 『家族じまい』には、孫の視点で書かれたお話はなかったですよね?

桜木 そうなんですよ。だから、孫の視点で書いたということも、この絵本の大切なところになっていると思います。最初に渡した原稿のまま、娘の視点で書いていたら、『家族じまい』の延長になってしまうから。

オザワ あぁ。そうですね。

桜木 孫である「わたし」に、みんなが自分を重ねられる。語り手が、おばあちゃんでもお母さんでもなく、みんながいつか通り過ぎてきた孫だったことに意味があったんだなと思って。

オザワ これを小学生の女の子が読んだとしたら、今はピンとこなくても、大人になった時に、「あぁ、そうか」って思い出してくれるかも。お母さんがいつかこうなってしまうかもしれないという、心の準備ができる本でもある気がします。

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オザワミカ

愛知県出身。イラストレーター。書籍や雑誌のイラストや演劇の宣伝美術をおもに手がける。人との関わりについて考えることが好き。2010年の漫画家・江口寿史氏との2人展「reply」(リベストギャラリー創/東京吉祥寺)など展示活動多数。
2019年リボーンアートフェスティバル青木俊直展ディレクター。フリーブックレット『BOOKMARK』(金原瑞人氏発行)イラスト・デザイン担当。

桜木紫乃

桜木紫乃(さくらぎ・しの)
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で「オール讀物」新人賞を受賞。07年に同作を収録した単行本『氷平線』を刊行。13年『ラブレス』で島清恋愛文学賞を受賞。同年、『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞し、ベストセラーとなる。他の著書に『起終点駅 ターミナル』『無垢の領域』『蛇行する月』『裸の華』『緋の河』など。20年『家族じまい』で中央公論文芸賞を受賞。21年3月刊行の、著者初の絵本『いつかあなたをわすれても』も好評を博している。

撮影/露木聡子

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