2021.3.5
最短で成功をつかむコツは意外なところに? こち亀作者が明かす「未来術」~漫画家・秋本治の仕事術
Q.仕事がマンネリ化。思い切って休職や転職すべきでしょうか?
同じ会社で同じ仕事を続けて数年。そこそこの成果を得られるパターンもわかってきて、収入や環境は安定していますが、どうしても気持ちはマンネリ気味に。
年齢を重ねると、今以上に新しいことに挑戦しづらくなっていくかもしれないと思うと、このまま今の仕事を続けていいのか? 自分の人生はこれでいいのか? と不安な気持ちがふつふつと湧き上がってきます。
思い切って休職して新しい知識を身につける時間をとったり、異業種に転職したり、リセットしてみた方が良いのかという気もしてきて……。
40年間漫画家を続ける秋本先生が、マンネリ化せず魅力的な作品を生み出せる秘訣はどこにあるのでしょうか?
A.〝現役の力〟を信じ、休まずに動き続けたからこそ得られる成果がある
『こち亀』でデビューしてからずっと、僕は休載というものを恐れてきました。少しでも休むと、感覚が時代からズレてしまうのではないかと思っていたのです。実際、動きの速いマンガの世界では、半年も描かないと状況は大きく変わります。
漫画家には「次の展開はどうしよう」という悩みがつきものです。多くの漫画家は、ひとつの作品の連載中は悩まず一気に描ききり、連載を終えて次回作をスタートするまでの間に悩むものだと思います。しかし僕の場合、『こち亀』の連載があまりにも長く続き、その間、休みをまったくとらなかったので、描きながら悩むくせがつきました。
ただ、僕の悩みはそれほど深いものではありません。「あと3週で終わりね」と、突然打ち切りを宣告されてもおかしくない世界でずっとやってきたわけですから、常に開き直っていたといってもいいかもしれません。とにかくどんなにマイナスな状況でも、「まあ、何とかなるんじゃない」という楽観的な気持ちを持ち続けていたのです。それは裏を返せば、いくら悩んでもダメなものはダメという過酷な状況にあったからこそ培われた心構えかもしれません。
大抵はなんとかなる、でもダメなときはダメ。それだけです。シンプルに考え、あとは素直に自分の力を信じ、やれることをやるしかないのだと思います。
『こち亀』の連載を終えたあと、僕は間髪を容れずに四つの作品の連載を新たにはじめました。やはり休むのが怖かったのとともに、〝現役の力〟を信じていたからだと思います。どんな人でも、一旦休んでしまうと、必ず周囲の状況とのズレが生じます。底力のある人は、そのズレを短時間で修正し、またよい仕事をしていけるのだと思いますが、僕のとったやり方は、ズレが起こるような休みはとらず、そのまま動き続けることでした。
そして最近の僕のマンガの中では、特に『Mr.Clice』に対して〝攻めている〞との評価をいただくことが多くなりました。このマンガは、「脳(精神)は男性だが体は女性」のスパイを主人公とする作品です。不定期連載ですので担当者との打ち合わせは、ざっくりとしたものですが、キャラクターも設定も自在に動き、ネームをつくっていても自分の想像以上のものが飛び出すようになっています。ドローンを使ったり核兵器の話だったり、自分でも思いもしなかった世界が描けている感じがするのです。
これは僕が休まずに動き続けたからこそ得られた成果なのだと思っています。
いまも僕は、仕事のやめどきというものがわかっていません。〝現役の力〞を頑なに信じているからです。
秋本治流、長く、楽しく、健康に仕事をする秘訣がこの1冊に!
漫画家・秋本治さんによる初のビジネス指南書『秋本治の仕事術 『こち亀』作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由』では、今回取り上げた未来術の他にも、
・週刊連載を続ける中で、「ツラい」「キツい」と感じたときはどう乗り越えてきたのか。
・週刊連載時代、そして現在もどのようなタイムスケジュールで働いているのか。
・歴代担当全員とうまくいった人間関係はどうやって築いたのか。
など、「40年間休載なし」という偉業を成し遂げた著者の仕事の取り組み方を公開。
巻末には本書のために描き下ろした特別漫画「両津勘吉の仕事術」も掲載しています。
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