2020.3.20
有名私大を出て就活で負けた男がすがる「ストロングな時間」
こちらのケースは、社会適応上の問題がアルコール問題へと移行していったわかりやすい例と言えるでしょう。発達障害の中でも、特にアスペルガー症候群に多く見られるコミュニケーション面でのつまずきが、飲酒のきっかけとなっていった事例です。
Eさんの場合、勉強ができたために見過ごされてきた、融通のきかなさや空気の読めない発言、対人関係をうまく築けないことなどが、就職活動の失敗によって初めて顕在化したのです。
黒ずくめのスーツが象徴するように、日本の就職活動の場合、皆と同じように振る舞いつつ、その中で自分の個性や強みを際立たせるという高度なコミュニケーション能力が要求されます。
Eさんの特性を理解した上で、能力さえあれば多少の凹凸を許容してくれるような職場にアピールできればよかったのかもしれませんが、ゼミ生や担当の教授とのよい関係を築けていなかったため、それもできませんでした。
私立の進学校でずっと成績がずば抜けてよかったEさんは、これまで「コミュ障」である、ということが直接的な問題になることがなかったのです。おそらく、両親も息子のそうした側面を知りつつも、あまり重要視してこなかったのではないでしょうか。
Eさんの現時点での飲酒量自体は多くはありませんが、「毎晩飲む」「孤独やストレスを紛らわすために飲む」「予定していた仕事に行けなくなっている」という点で、すでに問題のある飲酒習慣と言えるでしょう。
(編集協力:西野風代)
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