2021.9.13
推しにたくさん幸せをもらったから、推しにも幸せになってほしい ——森三中・黒沢かずこさんインタビュー
人生の半分以上、沼にはまり続けて20年。アラフォー、独身、実家暮らしの漫画家・竹内佐千子さんが、決して輝かず、されど奇妙に充実した日常を綴ったコミックエッセイです。
漫画、ドラマ、アイドル……様々な“沼”にハマってきた同世代の女性たちの心に、この本はどのように受け止められたのでしょうか。
『沼の中で不惑を迎えます。』書評、全4回の特別連続企画としてお届けします!
前回は、『おっさんずラブ』や『僕のヒーローアカデミア』の推し活にのめりこんでいることで知られるお笑い芸人のオカリナさんにご登場いただきました。
今回は、大の「東方神起」ファンであることを公言している黒沢かずこさんにインタビュー。本の感想や、ご自身の推し活について語っていただきました。
(聞き手・構成/よみタイ編集部)
――『沼の中で不惑を迎えます。輝くな! アラフォーおっかけレズビアン!』はアラフォーのオタク漫画家・竹内佐千子さんによるコミックエッセイですが、同世代の黒沢さんが共感したエピソードはありましたか?
ひとりっ子って大変だなと思いました。私も竹内さんと同じ独身アラフォーのひとりっ子で、親の介護のこととか、亡くなった後のこととか、最近すごく考えるんですよ。私は遅くにできた子どもなので、親はもう80歳くらいになっていて、いつ何があるかわからないので。私の場合は、親と一緒に暮らしていないので、電話が鳴ると、親に関わる何か悪い知らせじゃないかとドキッとします。
ひとりっ子って介護の手続きとか、葬儀の喪主とか、全部一人で背負わなきゃいけないじゃないですか。それがもうとにかく恐怖で。役所とか病院とか保険とか、そういう手続きを一緒にしてくれる夫がほしいから、最近結婚したくてたまりません。
夢や希望ではなく恐怖から生まれた歌「結婚すれば全て解決」
――自分の代わりに手続きをしてくれる人がほしいから結婚したいんですか?
そうです。結婚したい理由はそれに尽きると言ってもいいくらい。幸せを2倍にするより、恐怖を分け与えられる人が欲しいんです。幸せなんて、ほんのちょっとしたことでも手に入りますから。でも恐怖は自分の中で抱えるしかないので、恐怖を分け与えられる人、やりたくないことを分担してくれる人が必要なんです。
最近『クセスゴ』(編集部注:フジテレビ系のバラエティ番組『千鳥のクセがスゴいネタGP』)でも『結婚すれば全て解決』という歌を作って披露しました。結局「結婚って甘くない、幸せなことばかりじゃないよ」っていうのは、若くして結婚した人とか、子どももいて幸せに生きている人の意見なんですよ。幸せになりたいとか家族を持ちたいとか、そういう希望があって結婚したいって言ってるわけじゃないんです。40過ぎた独身ひとりっ子が抱えている、親への責任とか、自分の老いとか、そういう恐怖から少しでも逃れるには、結婚して負担を減らすしかない。そういう意味で結婚は有効なんだという思いを込めて作ったのが『結婚すれば全て解決』です。
一人でその恐怖に立ち向かえる人はいいんです。あと、恐怖が分担できれば入籍せずにパートナー関係でもいいのですが、入籍することで親が安心して落ち着いてくれるのであれば、やはり結婚という形がいいですね。