2021.1.3
鎌倉は、冬もおいしい。鎌倉育ちの作家・甘糟りり子が愛する冬の名店3選
鎌倉育ちだから、鎌倉で今も暮らすからこそ知り得た、四季折々の味の魅力やおいしさがが詰まった1冊です。
今回はこちらのエッセイ集に収録された数々の名店の中から、【冬の美食】を厳選してご紹介。
阿部伸二さんによる繊細で美しいイラストや、甘糟さんによる書籍未掲載の撮り下ろし写真とともに、鎌倉の美味、その背景にある文化までたっぷりとご堪能ください。
(写真/甘糟りり子、イラスト/阿部伸二、構成・文/よみタイ編集部)
魚介類は女性料理人が自ら漁に出て調達
まずは、小町通り沿いにある「ファム デ バトー アオキ」。店名はフランス語で「青木の船」という意味。
店主の青木園子さんが、自ら漁に出て手に入れた食材で料理したメニューを提供する居酒屋です。
メニューは和洋中、そして韓、おいしければなんでもあり。
甘糟さんの一年を通しての定番は、生姜がたっぷり入った「シラスと生姜の餃子」。
冬は「海老と白子の揚げ春巻」もオススメだそう。
味わい深いのは料理だけでなく、メニューにもぜひご注目を。
メニューは手書き。日付の下には、魚が取れた船の名前が書かれています。
「女性の料理人を応援したい」という気持ちがあるという甘糟さんは、バトー アオキの魅力をこう綴ります。
肉料理だってあるし、野菜のメニューも豊富。酒はビールや日本酒から焼酎、ウイスキー、ワインと揃っている。何人かの友人たちと食事をするとして、食べたいものや飲みたい酒が合わない日でもバトーアオキなら誰かが譲歩する必要もない。
ここに来ると、女性の料理人のお店だから云々、というのは野暮かもしれないと思うのだけれど、それでもやっぱり応援し続けたい。
そして、このバトーアオキですが、最近、店内を全面改装して再スタートされているとのこと。ぐっとオシャレに、さらに素敵な空間となったようなので、ここはぜひともチェックです。
鎌倉で一番ドレッシーな空間
次にご紹介するのは、フランス料理店「ミッシェル ナカジマ」。
白を基調とした店内と、気品溢れる料理。
このレストランを甘糟さんは「鎌倉で一番ドレッシーな空間」と表現します。
ダイニングに入って正面の奥には大きなガラス窓がある。暗闇にこちら側が映っているのだけれど、時折通る車のライトで瞬間的にライトアップされる。広がる森とゆるやかな坂がちらりと映し出され、モノクロのヨーロッパ映画を思い出した。ヒッチコックとかルイ・マルとか。近隣住民の反対でライトは設置できないそうだが、暗闇も悪くない。
ランチに来た時は窓が額縁となって、緑と坂の景色が絵画のようだった。昼と夜でまったく違う表情が楽しめる。
「フォアグラと酒粕、安南芋」、「帆立貝、下仁田ネギ、紫白菜」、「甘鯛のソテー」など、旬を丸ごと閉じ込めたような料理の数々は、まさに料理人たちの「作品」と呼ぶにふさわしいもの。
気軽なイタリア料理やビストロも人気の鎌倉において、貴重な正統派のフレンチ・レストランです。