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ワンオペ育児中の母親が陥った、ママ友ストレスからのアルコール依存

写真:PIXTA
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精神保健福祉士・斉藤章佳が見た「子育て世代のアルコール問題」

 子育て中の女性からアルコール問題の相談を受けることが増えています。依存症までいかなくとも、「乱用」のレベルの方は臨床現場で確実に増えていると感じます。

「乱用」とは、「家庭や社会生活上、著明な障害や苦痛を引き起こす飲酒の仕方で、かつアルコール依存症ではないもの」と言われており、依存症の一歩手前の段階ともいえます。

 妊娠中はもちろん飲酒はできません。妊娠中の女性が飲酒すると、胎児に大きな影響を及ぼすからです。胎盤を通じてアルコールが胎児の血液に流れ込むと、胎児はアルコールを代謝する能力が未発達なので、早産や流産、胎児の障害につながる危険があります。妊娠中の飲酒が胎児にもたらす障害を「胎児性アルコール症候群(FAS:Fetal Alcohol Syndrome)」といいますが、女性はこれらのことを知っているからこそ、妊娠中は飲酒しません。しかし、もともと飲酒習慣があった女性は、出産後にさまざまな理由からアルコールに耽溺たんできしていくケースが見られます。

 Aさんは、ママ友のコミュニティ、特にグループLINEから完全にドロップアウトしてしまいました。ママ友からの情報が入ってこないと、どんどん孤立していきます。さらに夫は、働き盛りの世代で忙しい。ワンオペ育児のお母さんの典型的なケースです。夫が仕事で家にいなければ、大人と話す時間がほとんどないため、孤独で、社会との断絶を強く感じてしまいます。
 出産前は自由に生きてきたのに、出産後は、例えば観たい映画があっても気軽に映画館に行くことはできないし、夜、友人にふらっと会いに行くこともできない。母乳で育てる時期が終われば、お酒を飲む習慣がまた戻ってくるため、時期的にもアルコールへの依存が表面化しやすいタイミングでした。

 Aさんも、最初はご褒美のつもりの缶チューハイ(AL5%/350㎖ )1本だったのが、ちょっと疲れた日やストレスを強く感じたときにストロング缶に手を出すようになり、そのうち毎日ストロング缶が普通の飲酒になっていきました。自分で決めたルールを自らどんどん緩めていったのです。
 そして、お酒を飲む時間も、夜寝るまでの間に抑えていればよかったのですが、飲酒時間がどんどん長くなっていったのが問題です。
 

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斉藤章佳

さいとう・あきよし
精神保健福祉士・社会福祉士。大森榎本クリニック精神保健福祉部長。
1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにソーシャルワーカーとして、アルコール依存症を中心にギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどあらゆるアディクション問題に携わる。その後、2016年から現職。専門は加害者臨床で「性犯罪者の地域トリートメント」に関する実践、研究、啓発活動を行っている。また、小中学校での薬物乱用防止教室、大学や専門学校では早期の依存症教育にも積極的に取り組んでおり、全国での講演も含めその活動は幅広く、マスコミでもたびたび取り上げられている。著書に『性依存症の治療』『性依存症のリアル』『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『「小児性愛」という病——それは、愛ではない』がある。

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