2026.1.21
始まりは、一枚の古いスポンジサーフボードから【サーフィン犬 コーダが教えてくれたこと 第5回】
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きっかけは、一枚の古びたサーフボード
コテージの目の前が海と言うことで、ボディボードの出番だとばかりにコーダと波に乗りに行ったら、それを見たコテージのオーナーさんが面白がって「これ、乗ってみなよ」と、スポンジ素材(ボディボードと同じ素材)のサーフボードを持ってきてくれました。
当時の私はサーフィンを全くやったことが無く、ボードもボディボードよりずっと大きいし、どうやって波に乗るの⁉と言う感じでしたが、一方のコーダは、サーフボードに乗せてみたその瞬間からすでに落ち着いていて、波で揺れていても「どうって事ないよ!」という様子でした。
波が迫ってきたので、コーダひとりを乗せたサーフボードを岸に向けて押し出すと、驚いたことにコーダはスーッときれいに岸まで波に乗っていきました。コーダにとっては初めてのサーフィンなのにいきなり乗れてしまったので、周りの犬友達も大盛り上がり。そこで同じように何度も波に乗せてみましたが、コーダは終始どっしりと構えていて、すでに波に乗る事自体を楽しんでいるようでした。サーフボードを波打ち際に置くと、まるで自分の出番がわかっているかのように自らボードに乗ってきます。
そんなコーダを見て、「このサーフボード、あげるからこれからもやってごらんよ」と言って、オーナーさんは私の車のキャリーにボードを縛り付けてくれました。そのスタイルがカッコよくて、「なんだかサーファーになったみたい」とワクワクしながら家に帰りました。とはいえ、私は全くのサーフィン初心者(コーダは一度でうまく波に乗れたけれど)。それでも、このサーフボードはもともと人間用なんだから私も乗れるんじゃない?と、勢いでサーフィンを始めてみることにしました。

…ところが、全然。かまぼこみたいに板に張り付けばなんとか乗れますが、それは「波に乗る」と言うよりは「泡に流されて行く」感じ。波に飲み込まれてはひっくり返り、ボードは海中に縦に突き刺さり、鼻に口に海水がザンザン入ってきます。これではサーフィンではなくて難破船です。
このままでは一生サーフボートの上に立てる気がしない。何故、波に置いた板に乗りながら立てるなんて考えた人がいるんだろう。陸でならもちろん立てるけれど、波の上でのサーフボードは滑るしバランスも取れないし難しすぎる。こんな難しいサーフボードに涼しい顔して乗っているコーダはなんて凄いんだろう…。
――コーダが先端に立って、私はかまぼこスタイル。それはそれで楽しくはあったのですが、#サーフィン犬 #surfingdog そんなハッシュタグをつけてインスタに投稿していたところ、海外ユーザーからの「いいね」もつくようになり、ある日、その中に青い目をした犬がサーフボードに乗っているアイコンの人がいて、辿ってみるとカリフォルニアのドッグサーファーだと言うことがわかったのです。
その人の名は、Skylerthesurfingdog( @skylerthesurfingdog)。投稿されている写真では、surfingdogのSkylerが、信じられないような大波に乗っています。SkylerのパパであるHomerさんはスポンサーもついているプロサーファーで、サイズの大きいロングボードにSkylerとタンデム乗りをしています。Skylerがサーフボードの先端に立ち、その後ろにHomerさんが立ち大波に乗る姿がカッコ良すぎて、一瞬で憧れの神様になってしまいました。
「コーダが先端に立って、私はかまぼこスタイル」でも楽しいのですが、SkylerとHomerさんのように、ボードにふたり共に立ち、優雅に力強く波を滑っていけたらどんなに素晴らしいだろう。そんな風にコーダと一体になって波に乗れたら…。その想いで何度も海に通い続けましたが、私はサーフボードの上に立つだけで精一杯で、コーダと一体感どころかコーダもろとも犬神家(の一族)のように逆さまになって海の底に回転しながら沈んで行くばかりでした。
当時、月給十数万円の会社員でコーダと賃貸物件に住み生活ギリギリだった私は、もらったサーフボードで何とかしたいのが本音でしたが、もしかしたらボードが小さいのかもしれない…とも薄々感じていたため、ある日ふらっと、幕張にあるムラサキスポーツをのぞいてみました。スタッフの方に「犬とサーフィンがしたい」と話すと、驚かれつつもちょうど日本に初上陸したばかりだというエメラルドグリーン色のスポンジボードを勧められました。サイズは9ft(約2m75㎝)、ロングボードと呼ばれるジャンルのものでした。スポンジ素材なので、犬や人にぶつかっても怪我の心配が少なく、かつ浮力があるから初心者でも乗りやすいというのです。
その時、店長の明松さんに言っていただいた言葉は、今でも忘れられません。
「沖からパドリングしてうねりから波に乗ってタンデムサーフィン、頑張ればきっとできるよ。誰もやってないことをやってみなよ。その姿が見られるのを楽しみにしてるよ!」
「犬とサーフィンがしたい」なんて変なことを言っても、笑わずに真剣に考えてくれて、まだボードの上で立てもしないのにそんな風に励ましてくれるなんて。私はその日から、購入した新しいボードで、休みさえあれば海に通うようになりました。どこの海でサーフィンしたらいいのかもわからない初心者中の初心者だったので、とりあえずボディボードで行っていた太東海水浴場にひたすら通いました。

スクールに通うところまでは頭が回らず、自己流でなんとか波に乗れるようにはなってきましたが、コーダが前に乗っていないとバランスが取れず、必ずコーダと一緒にサーフィンするのが定番でした。楽しそうだけど超絶・ヘタくそな私たちを見るに見かねた人がたまに声をかけて教えてくれ、そこから、話しかけてくれる人、挨拶してくれる人、コーダを可愛がってくれる人も現れ出し、いつの間にか友達が増えて行きました。
そして、気づいた頃には、パドリングで沖からうねりに乗ってコーダと波に乗る、タンデムサーフィンができるようになっていました。岸にボードを置けばコーダがひらりと飛び乗ってきて、そのまま一緒に沖まで行き、波待ちではボールを投げてキャッチして遊び、波が来たらボードの向きを変えて、するとコーダがボードの先端に向き直り前足をぐっと下げて構えて…。一度波に乗ったら、ふたりで太陽でキラキラした波の上を滑って、コーダの耳が風でパタパタはためいているのを見て、岸に着いて波に乗り終わったら、ウェットスーツに入れていたボールを思い切り遠くに投げてコーダのご褒美タイム。サーフボードからジャンプしてそのボールを力強く追いかけていくコーダを見る、私が一番大好きな瞬間です。
――これ以上最高のことって、私の人生で他に存在しないと思いました。私が生まれてから今までで一番最高の瞬間は、コーダと良い波に長く乗れている時。きっとコーダもそう思ってくれているはずです。
幕張の小さな浜辺から始まったコーダと私の海遊びは、ここからどんどん、なんと世界にまで広がっていくことになります。

【ドッグトレーナー浅野のWANコラム-5-】
自分が楽しいことは愛犬も楽しい⁉ 一緒に心から遊ぶことが絆を深める近道
犬を飼育する世帯数は全国で約600万世帯と推計されているようですが、その暮らし方はさまざまで、家の外に繋いでご飯と水だけあげて朝晩の引綱運動(散歩)だけで飼育している人もいれば、自分の生活に近しい形で犬と暮らしている人もいます。私の場合は後者になりますが、犬の生理的欲求(食餌・排泄)、安全欲求(住環境・健康)、社会性欲求(他人・他犬等他の存在との接触)、精神の安定(行動や情動の管理)、を満たすのは大前提として、そこからさらに愛犬と「仲良くなる」ためには、どうしたら良いのかということをずっと追求してきました。
犬と仲良くなるためには、犬が持つ認知欲求(退屈を減らし新しいスキルや刺激に触れる)を満たすことが重要で、それによって犬が飼い主に魅力を感じてくれるようになります。「認知欲求」にはこれといった決まりはなく、子犬、成犬、老犬などライフステージによっても刺激の量や質への欲求は変わるものなので、つまりは犬と遊びましょう、「遊んであげる」のではなく「犬と一緒に心から遊びましょう」とアドバイスしています。それには、犬がストレスを感じていないか、楽しめているのかを見極められる目も必要なので、犬のボディランゲージが読めるように勉強しておくことも必須になります。ネットで調べても良いですが、『犬語図鑑 犬のボディランゲージを学んでもっと愛犬と仲良くなろう 』(リリー・チン著)などは、絵と解説が読みやすくオススメです。
「犬と遊びましょう」=「ドッグランに行く」ではもったいないです。リードから解放してただ自由にさせるだけでは、飼い主に魅力を感じてもらうことは難しいです。「ロングリードをつけて公園でボール投げ」は良いですがマンネリになりがちなのが難点です。まず、自分が愛犬になったつもりになって、楽しいことを考えてみてください。飼い主であるあなたが好きなことを愛犬と、できる範囲で一緒に楽しんでみましょう。「遊び」は自分も楽しいことが前提です。自分の趣味なら、好きこそものの上手なれで楽しいと感じながら愛犬とも飽きることなく続けられます。また、遊びながらの楽しい状態で学ぶのが、犬にとって一番負担なく賢くなる方法です。そして、賢くなることがお互いの絆を深めることに繋がっていくのです。
私は、ドッグトレーナーとして、「犬と楽しく遊んで少しずつステップアップしていたら、いつの間にか色々できるようになっていた…」という縁の下の力持ち的教え手を目指しています。
次回、連載第6回は2/18(水)公開予定です
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