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「誘うのはいつも私ばかり…」友人関係を維持するために必要なもの【こんな質問が来る 第6回】

あなたの勇気をずっと覚えていてくれる誰かもきっといる

 現代社会では多くの人が点々と場所と組織を移動しながら生きている。日々忙しく働く大人の友人関係を維持するのは生半可なものではない。こんな時代には、大人の友情ほどあっさりと音もなく消えてしまうものはない。

「見えない労働」という言葉がある。たとえば家族を支える家事労働が不可視化され、過小評価されてきた問題を指摘する際などに用いられる言葉だが、友人関係にも「見えない労働」があるのではないかと思う。

 友人はあらゆる人間関係の中でもとくに自由であり、何の約束も義務もない関係である。約束も義務もないからこそ友情は誰にでも必ず生まれるものとは限らないし、すぐに消えてしまう。だからこそ友人関係にはそれを維持しようとする「見えない労働」が必要なのである。約束も義務もない友人関係における「見えない労働」は、たとえば一歩踏み出し続ける勇気なのではないだろうか。

 もういちど問う、あなたは「誘う側」だろうか、「誘われる側」だろうか。

 そういえば、僕が小学校に入学した最初の日のことである。

 真新しいランドセルを背負って歩く、慣れない帰り道。よく吠える犬がいる家の前をびくびくしながら通り過ぎようとした、まさにそのときである。

「なあ、同じクラスやんな?」

 そうやって後ろから僕に呼びかけたフジイ君の声は30年経とうが、40年経とうが、一生忘れない。

 新学期のクラス替え。新しい職場の最初の昼休み。それぞれの場面で一歩踏み出してくれた友達のことは、案外、忘れられないものである。

 あなただけが頑張って支えていた関係もあるだろう。頑張った甲斐なんてなかったと後悔する関係もあるだろう。そして、もう一歩のところで伸ばした手も届かず、さらさらと忙しい日々に流されて離れ離れになっていった友だちもいただろう。
 しかし、あなたの勇気をずっと覚えていてくれる誰かもきっといるだろうと思う。

 いつも、ありがとう。あのLINE、すぐに返します。

 次回連載第7回は4/22(水)公開予定です。

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新刊紹介

中井治郎

(なかい・じろう)
1977年、大阪府生まれ。社会学者。龍谷大学社会学部卒業、同大学院博士課程単位取得退学。著書に『パンクする京都』『観光は滅びない』『日本のふしぎな夫婦同姓』がある。

X(旧Twitter)@jiro6663

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