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流行りに乗れない勢が「それって単なる逆張りですよね」「特別な感性の持ち主と思われたいアピですか?」とマウントされ、孤独を深めている件

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「作られた熱狂」を疑い、良いモノづくりより「名声欲」を優先する作り手を嫌悪

 また、こうして「みんな」と自身との対比を掘り下げていると、僕の中には上記心理的リアクタンスとは別に、「無条件な評価や熱狂を疑う・嫌う」という、ことさら強いバイアスが働いていることにも気づいた。
 僕の中には、熱狂・流行を見ると(特にいきなり現れたように見えるそれをみると)、「怪しい」「胡散臭い」「嘘っぽい」と思うスイッチがあり、その熱狂の背後にある扇動者を疑うという、強いバイアスがあるようなのだ。
 それは多分、生得的な性格に加え、これまでの人生の中で、熱狂というものは意図的に作り出すことができると感じるようになったからだと思う。
 ナチスドイツや皇国日本の熱狂や暴走といった歴史や、現代カルチャーにおける、古くはアイドルのスカウトキャラバン・公開オーディションスタイルや、デビューまでの成長をストーリーとして描く秋元商法、K-POPの計算しつくされたメディアミックス戦略等々を見ても、「熱狂は作れる」は立証されていると言っていいのではないか?
 けれど、一定の支持があることで「支持されていること自体がさらなる支持を呼ぶ」のであれば、金をかけメディアを操作し露出を増やし、提灯記事だろうがサクラ動員だろうがプロパガンダだろうがなんだろうが「起爆点となる一定」を作り上げてしまえば、その後の熱狂は大衆自身が作ってくれる。
 そこには物の良し悪しは関係しない。
 だったらむしろ不自然な熱狂に「怪しさ」「買い損」を直感するほうが正常だと思うのだが……。

熱狂・流行を見ると「怪しい」「胡散臭い」「嘘っぽい」と思うスイッチがあり、その熱狂の背後にある扇動者を疑ってしまう。(写真/PIXTA)
熱狂・流行を見ると「怪しい」「胡散臭い」「嘘っぽい」と思うスイッチがあり、その熱狂の背後にある扇動者を疑ってしまう。(写真/PIXTA)

 さらにもう一点、こうした内省を深める中で改めて自覚できてくるのが、前回でも触れた「著名」というワードに対する忌避感や嫌悪感の強さだ。これは、ここまで書いたような「流行りに懐疑的なこと」とは似ているようで異なった感情と評価軸だ。
 作り手や表現者が良いものを作り続けた結果として著名になる=正当な評価を得ることは、とても良いことだと思う。だが、作り手が著名だから良い作品を作ると判断することや、著名だからという理由でクリエイターを無条件に崇拝すること、特に「良いモノを作り続けるために著名になりたい」ではなく「ただ著名になること」が目的化しているような作り手に対して、僕の中には根強い嫌悪感があるのだ。

 どうしてなのだろう?
 よくよく考えて、ひとつ自分の中で一つの強い感情が見えてきた。僕は、おそらく「名声欲」というものがよく理解できず、その名声欲を最大の行動原理とする人々に対しては醜さや不誠実・欺瞞を感じる感情があるのだ。
 だからこそ、ファン心理の中で「布教行動」の背景となっている推しの対象がより著名になる=「名声欲を達成する」ことが、僕の中での成功像ではないし、自身が憧れたり力づけられたり再現し目指したいと思える心理も、全く起きてこない。
 むしろ作品や実績作りよりも名声欲・承認欲求や自己実現欲の強さが透けて見える芸能人や作家・政治家などなどは、押しなべて応援の対象ではなく、むしろ嫌悪の対象として認識されてしまう。
「どうしてあの気持ち悪い人たちを支持できるのだろう」とすら思ってしまうのが、僕の本音なのだ。
 結果。それを応援しようとする人々を心底理解できないし、応援して当たり前という空気を押し付けてくる「国民的○○」みたいなものにも激しい拒絶反応を起こしてしまうのであった……。

「流行りに乗れない」ことと、発達特性との関連性

 さてさて、ここまで掘り下げると汎化が難しくなってしまう気がするが、少なくとも「流行りに乗れない」僕には、心理的リアクタンスが極端に強いこと、作られた熱狂や良いモノづくりより名声欲を優先する作り手などの欺瞞に対する強い嫌悪感などがあることが露呈してきた。
 果たしてこの感覚を共有してくれる読者はまだ居るだろうか? まだ僕「ら」であってくれているだろうか?
 もし共感があり、かつ僕と同様に我々とは違う社会=「ファン心理や推しを抵抗感なく許容できるマジョリティ社会」にどうしても迎合できないことで孤独感や実害を体験している読者がいるなら、これは立派にマイノリティ論になるのではないかと僕は考えている。
 
 次回はもう一歩、生まれつき上記のような性質であったことで、僕自身が単に流行りを理解できず孤独やコンプレックスを感じてきただけでなく、成人後の実生活や実務上でも様々なシーンで大きなデメリットを被ってきたことについて、掘り下げたく思う。
 実はこれまでの考察で言語化された自身の心理に「~~という感情をもつことと発達特性は関係あるか?」とAIに問うと、ほぼ100%関係大有りという回答が戻ってきて、意外というか納得というか、自身の中でも大きな疑義が立ち上がっている。
 はたして……。

 この連載は毎月第4土曜日午前9時配信。次回は4月25日(土)公開予定です。お楽しみに!

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鈴木大介

すずき・だいすけ/文筆業・ルポライター
1973年千葉県生まれ。主な著書に若い女性や子どもの貧困問題をテーマにした『最貧困女子』(幻冬舎)、『ギャングース(漫画原作・映画化)』(講談社)、『老人喰い』(ちくま新書・TBS系列にてドラマ化)や、自身の抱える障害をテーマにした「脳が壊れた」(新潮社)、互いに障害を抱える夫婦間のパートナーシップを描いた『されど愛しきお妻様』(講談社・漫画化)などがある。
2020年、「『脳コワ』さん支援ガイド」(医学書院・シリーズケアをひらく)にて日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞。近刊に『ネット右翼になった父』(講談社現代新書・新書大賞2024・5位)『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』(幻冬舎新書)など。

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