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流行りに乗れない勢が「それって単なる逆張りですよね」「特別な感性の持ち主と思われたいアピですか?」とマウントされ、孤独を深めている件

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逆張り心理を支える「アンダードッグ効果」「スノッブ効果」「心理的リアクタンス」

 ではでは他方、どうして僕自身は、安心感や一体感よりも、「自分の感じる良し悪しに嘘をつきたくない」方を優先してしまうのか? どうしてハズレもアタリも自分自身の判断で引きたいと思ってしまうのか? 本音は寂しいくせに、どうして?

 ということで、同調効果やバンドワゴン効果にはどんな対義的な概念があるかというと、
・劣勢や少数支持の側を応援したくなるアンダードッグ効果(いわゆる判官びいき)
・「みんなと同じは嫌だ」というバイアスから限定品やレアもの、まだ支持が少ないアーティストなどを好むスノッブ効果
・「流行っているから買うべき・観るべき・聴くべき」といった強制が感じられるとそれに反発して自由や自主性を確保しようとする心理的リアクタンス(見るなと言われると見たくなるカリギュラ効果も含む)
などなどがあるとされている。
 
 お、と思った。
 まず僕の中には、アンダードッグ効果が極めて強くある。劣勢な者、理不尽に過小評価されている者、才能はあるが不人気な表現者などを応援したいといったバイアスがめちゃくちゃ強いから、身に着ける物に国産で地味に良いものを作る零細メーカーのものを選ぶことが多いし、才能あるインディーズバンドとか国内認知が全くない海外アーティストなんかに惹かれてきた傾向もある。「みんなと同じは嫌だ」と思わないものの、アンダードッグ効果が強い結果として、行動としてはスノッブ効果的なレアリティ志向になっている。ただし前提として、「自分が良いと思う・才能を感じる・感動を得る」ことが絶対だ。レアだから良いではなく、良いものなのにレア(評価されていない)から、欲しくなり応援したくなる。

 一方、全面的に納得できるのは、三つ目の心理的リアクタンス=自由と自主性を強く求める傾向だ。
 価値観でもルールでもなんでも、「強制」されると、強い不自由感を感じ、反発せざるを得ない。なにもかも自分で選び、自分で判断させてほしいという強い欲求が僕にはある。「ダメ」「危ない」と言われたことを片っ端からやりたくなるのはもう、子ども時代からの性癖だったし、みんなと同じ(制服を着たり毎日同じ時間に同じ場所に通う)を強要されると猛烈な不自由感と従うことの困難を感じてしまうのは、実害と共に若い頃からのコンプレックスですらあった。
 まさにこれが、僕が「僕の良いと思うもの」に拘泥する部分、周囲と一体になれなくて寂しいにもかかわらず、自身の判断を最優先してしまうことの基盤なのだろう。
 もう、本能的に嫌なのだ。合わせたくない、合わせられない、従いたくないし、従えないのだ。
「ただ逆張りしたいだけじゃない?」「特別な感性の持ち主と思われたいアピですか?」などと問われたら「なりたくてこうなってるんじゃないよ!」と言い返したくなる理由は、まさにここにある。

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新刊紹介

鈴木大介

すずき・だいすけ/文筆業・ルポライター
1973年千葉県生まれ。主な著書に若い女性や子どもの貧困問題をテーマにした『最貧困女子』(幻冬舎)、『ギャングース(漫画原作・映画化)』(講談社)、『老人喰い』(ちくま新書・TBS系列にてドラマ化)や、自身の抱える障害をテーマにした「脳が壊れた」(新潮社)、互いに障害を抱える夫婦間のパートナーシップを描いた『されど愛しきお妻様』(講談社・漫画化)などがある。
2020年、「『脳コワ』さん支援ガイド」(医学書院・シリーズケアをひらく)にて日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞。近刊に『ネット右翼になった父』(講談社現代新書・新書大賞2024・5位)『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』(幻冬舎新書)など。

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