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流行りに乗れない勢が「それって単なる逆張りですよね」「特別な感性の持ち主と思われたいアピですか?」とマウントされ、孤独を深めている件

『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』(幻冬舎新書)『ネット右翼になった父』(講談社現代新書)など、実体験ベースに問題提起を続け支持を集める文筆家の鈴木大介さんによる新連載! 生まれてこのかた「推し」の対象がいたことがないという鈴木さん。「推し活」ブームのいま、あえて「推せない者のしんどさ」を言語化します。

前回「アーティストにとっての作品が楽曲なら、政治家にとっての作品は政策のはず。「高市だから推した」“推し活勢”に対する抵抗感を言語化してみた」では「推し活選挙」と称された2026年2月の衆議院選挙に対する嫌悪感、そして「ファン心理」を理解できない理由を掘り下げました。
今回は「それが流行しているから飛びつきたくない」という“逆張り心理”について考察します。

記事が続きます

人は「同調効果」「バンドワゴン効果」などの「集団心理」で流行りに飛びつく

 そもそもなぜ人は、流行りに飛びつくのか? 今回は、「飛びつけない側」からすると全く理解できないその心理の深掘りから進めよう。
 まず、人間が「みんなが良いというものを良いと判断する」「みんなと同じ行動をとる」ことの背景としてマーケティング界隈などでよく挙げられるのは、同調効果やバンドワゴン効果などの集団心理だという。
 同調効果とは、周囲と同じ服装を求めたり流行りに乗ったりと、周囲と合わせることで「安心感や一体感を得る」(孤立や仲間外れを回避し、帰属意識を持つ)心理で、時には周囲が誤っていると感じている場面ですら、合わせる方を選択するとされるもの。
 一方のバンドワゴン効果は行動経済学などで語られる概念で、例えば行列が並んでいる店を見ると「みんなが並ぶ=おいしい」と判断して自らも並ぶ心理を言う。流行っている・多くの支持を受けているものが、さらに加速度的な流行り・支持を集める理由とされていて、その背景には多くの者がする判断に従うことで、自身で判断する思考コストを省き、かつ自身の判断で選択した結果に失敗することを回避したいという心理もあるという。

「みんなが並ぶ=おいしい」と判断して自らも並ぶバンドワゴン効果には、自身で判断する思考コストを省き、かつ自身の判断で選択した結果に失敗することを回避したい心理もあるという。(写真/PIXTA)
「みんなが並ぶ=おいしい」と判断して自らも並ぶバンドワゴン効果には、自身で判断する思考コストを省き、かつ自身の判断で選択した結果に失敗することを回避したい心理もあるという。(写真/PIXTA)

 これらは、人間が集団社会を形成して生きる生物であるうえで、必要な集団心理だとされていて、こうした心理をもつ個人が集団を成すことで、その集団は集団内での意見を速やかに揃えることができ、集団としての迅速な判断と意思決定を下すことができ、かつ集団内の人間関係を円滑に保てるのだというが……。
 なるほどなるほど、とは思うものの、うーん、困った。
 まず困ってしまう一つ目は、僕自身にこの「周囲に合わせる本能的なもの」が相当に欠落していることを突き付けられたから。実際僕自身、集団の意思決定と円滑を乱しがちな存在であることは自覚してる(なので極力出しゃばらないようにはしている)。
 けれど反面、前回までに書いたように、僕には世間が良いというものを良いと思えないことによる孤立感や仲間外れ感を感じることはあるし、それなりに帰属意識だって欲しい。
けれど、安心感や一体感を求めることよりも、自分が良いと思わないものを良いと偽りたくはないという気持ちが、どうしても勝ってしまうのだ。
 更にもう一点、「損をするなら自分の判断で損をしたい」という気持ちがあることも見えてきた。
たとえばみんなが良いという作品を実際見たり聞いたりした結果「全然駄目でガッカリ」なんて経験や、人気の名店で飯を食ってガッカリなんて経験は僕も腐るほどしてきている。けれど僕の中には、同じハズレを引くなら、自分で調べて自分で判断して挑戦したときの方がハズレのダメージが少なく、逆に自身の判断の結果にアタリを引いた時のほうがはるかに感動を大きく感じる傾向が強くあるようなのだ。

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新刊紹介

鈴木大介

すずき・だいすけ/文筆業・ルポライター
1973年千葉県生まれ。主な著書に若い女性や子どもの貧困問題をテーマにした『最貧困女子』(幻冬舎)、『ギャングース(漫画原作・映画化)』(講談社)、『老人喰い』(ちくま新書・TBS系列にてドラマ化)や、自身の抱える障害をテーマにした「脳が壊れた」(新潮社)、互いに障害を抱える夫婦間のパートナーシップを描いた『されど愛しきお妻様』(講談社・漫画化)などがある。
2020年、「『脳コワ』さん支援ガイド」(医学書院・シリーズケアをひらく)にて日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞。近刊に『ネット右翼になった父』(講談社現代新書・新書大賞2024・5位)『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』(幻冬舎新書)など。

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