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小池克臣「No Meat,No Life.を生きる男の肉だらけの日々 肉バカ日誌」
年間200食もの牛肉を食べるという、名実ともに肉バカ、小池克臣が日々蓄えてきた肉への愛、知識、体験……そのすべてを注ぎ込む究極の肉コラムがここに。肉好きはもちろん、そうでなくても知っておくべき肉のあれこれが満載!

名店ひしめく川崎焼肉紀行~騒ぐな走るなあわてるな

12月某日

久しぶりにハシゴ前提で焼きまくるプチ焼肉遠足を決行した。
攻めるポイントは、平成が終わろうとしているこの時代にまだまだ昭和の雰囲気を残す焼肉屋が多い川崎。

この街を制覇せずして、肉好きを語ることは出来ない。

焼肉遠足に出るにあたり守るべき3か条がある

プチ焼肉遠足に際して、最初に諸注意を伝えておきたい。

1. 基本的に予約は厳禁

プチ焼肉遠足では焼肉屋をハシゴしながら数軒回ることになるため、1軒で満腹まで食べるようなことはない。そのため、事前に予約をしてお店に準備してもらうのは申し訳ないので、飛び込みが基本となる。
ただし、1軒目でつまずくと精神的に弱るので、1軒目だけは予約しても良いが、事前にそんなにはたくさん食べられないことと、長居せずにすぐお店を出る旨を伝えておこう。

2. 人数は3人から4人

これもお店にかける迷惑を極力少なくする配慮。
1人の食べる量が少なくても、人数が多い方が単純に食べる絶対量が多くなる。また、気になるメニューがいっぱいあった時にも人数がある程度いた方が助かるだろう。
また、焼肉屋のテーブルは4人掛けが多いので、5人以上だと飛び込みで入店しにくくなるので注意が必要。

3. 騒ぐな!走るな!慌てるな!

プチ焼肉遠足は楽しい。
意図せずともテンションは上がってしまうもの。
だが他店の話を大声でするのは迷惑なので控えよう。
また、どんなにテンションが上がっても走ってはならない。
焼肉と焼肉の間の移動は出来れば車が望ましい。
体力の全てを消化に注ぎ込もう。

そして最後だが、プチ焼肉遠足は時間との勝負でもある。
だが決して慌ててはならない。
平常心を保ち、どこまでも穏やかな心で焼いてこそ、最高に旨い焼肉を食べることが出来るというもの。

食べたものが口に合わなくなるような原因を自分が作ってはならない。

川崎焼肉紀行の1軒目は、川崎市の中でも知る人ぞ知る池上町にある【道飛館焼肉店】。

池上町の歴史についてはここでは触れないが、ネットに溢れる話を素直に信じてしまうような雰囲気に満ちている。

暗闇を進むと足元に立てかけられた道飛館の看板を発見。
一切の飾り気がなく、なんだかちょっと不安になる看板だ。

看板の奥へと歩いて進むが、細い路地は建物の間を縫うようになっていて、その奥にある明かりが、今回目指していた道飛館である。

お店の外観も雰囲気が素晴らしく、昭和の焼肉を愛する肉バカにとっては100点満点だ。店内はテーブルとお座敷があるが、とにかく驚かされるのがピカピカに光るロースター。毎日営業後に丁寧に磨かれているのがよく分かる。

食べる前ではあるが、この道飛館が旨いというのが予想から確信へと変わった。

これだけ手間をかける店主の焼肉が不味いわけがない。

注文はセンマイ刺しに、ハラミ、カルビ、そしてロース。

食べたかったハラミは塩とタレの両方を注文。そしてこの判断が大当たり。
ハラミが抜群に旨いのだ。

男気を感じさせるような肉々しい食感のハラミを噛み締めれば、溢れるような旨みに富んだ肉汁が舌を包み込む。パンチのある塩ダレも旨いが、ご飯を我慢するのが辛いタレとの相性も最高だ。
このクラスのハラミを仕入れられるルートを持っているからこそ、何十年も地元に愛される焼肉屋なのだろう。

もっとハラミを食べたいという欲求を抑えつつお店をあとにしたが、これがプチ焼肉遠足の辛さでもある。

2軒目を決めるために食べログアプリを開く。

実はこの食べログアプリが焼肉遠足には欠かせない。
行きたい候補が複数ある場合、それらの位置情報を全て同時に地図上で確認することが出来るので、現在地から最適なルートを決めることが可能となるからだ。

この食べログの地図アプリで狙いを定めたのが【くいものや きよすみ】。
肉バカが極真を習っていた頃の先輩からもオススメされていたお店で、石焼きステーキにする塊のハラミの旨さとおばちゃんの接客がウリらしい。

早速、きよすみに電話したが、電話に出たおばちゃんの言葉に衝撃が走る。
なんと、手違いでこの日はお肉の仕入れが無かったらしい……笑いが止まらず、お店に行きたかったが、この日はプチ焼肉遠足、肉以外を食べることが目的ではないので泣く泣く、きよすみは次回に。

結局2軒目は川崎駅近くの【三好苑】に飛び込んだ。

牛タン、特上ハラ身、和牛上カルビ、ツラミ、上ミノを注文。
牛タンもなかなか良いが、やはりハラミが美味しい。
タイミングの問題だろうが、この日のハラミは肉厚な部分ではなく薄い部分だったが、適度な噛み応えがあり、タレとのマリアージュが素晴らしかった。

おばちゃんが卓上に運んできてくれるタレはコーヒーのサーバーに入っていて、ニンニクやネギなどが入った下町のマジックソースとも言える。

続いて鹿島田の【慶州苑】に向うも、残念ながらラストオーダーに間に合わない。

さらに平間の【北京】に向かったが、何故か通り過ぎてしまった。
「慌てるな!」という鉄則を忘れたが故の大失態だ……。

心を落ち着かせて、新たに向かったのは新城の【対州】。
ラストオーダー10分前にもかかわらず、気持ち良く入店させてくれたおばちゃんが輝いて見えた。
注文はタン塩、上ハラミ、並カルビ。
見るからに美しいタン塩は味付けがかなり強いが、サクサクの食感で間違いのない美味しさ。

自宅まで帰る終電を気にしつつ、最後に向かったのが深夜まで営業している(はずの)武蔵中原の【どうげん】。

ところが何故かお店は真っ暗。残念ながらお休みらしい。

この日のプチ焼肉遠足はここで心が折れた。

しかし、遠足自体への満足度は非常に高い。
普段は1軒に全力投球だが、たまにはこの日のような遠足も楽しい。
次回の遠足は何処に行こうか思案中である。

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小池克臣

こいけ・かつおみ●1976年、神奈川県横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。著書に『No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福 肉バカ。』がある。
公式ブログ「No Meat, No Life.」→ http://d.hatena.ne.jp/BMS12/

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