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松本雄司 弱冠32歳でモデルから京都・老舗酒造「黄桜」社長へ 【実録・メンズノンノモデル 第4回 前編】

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海外に日本酒の新しい可能性を見出している

「日本酒の黄桜」。二代目の代でそんなイメージを世の中に定着させ、酒造メーカーとして大きく飛躍した黄桜だったが、先代の松本真治の発案によって1995年に地ビール製造を、2018年にはウイスキー事業を開始。ともに今では黄桜にとって欠かせないプロジェクトへと成長している。そんな父の“先見の明”と“チャレンジ精神”に対して、松本は尊敬と感謝の思いを隠さない。

松本 大規模な地ビール蔵を新たに作り、少なくとも3年は熟成させなければならないウイスキーは兵庫県の「丹波蒸留所」に拠点を設けるなど、設備投資だけでも相当なリスクを負ったはず。それでも時代の流れを読んで新しい挑戦を重ね、こうして私の代に繋いでくれました。そうやって祖父から父、父から私へと紡がれてきたすばらしい商品の数々がもつ魅力を、より良い形で伝えていくのが私の使命だと思っています。

吟醸酒造りや地ビール造りの工程が見学できる「伏水蔵」では、主に1972年から小島功氏が描いた二代目カッパの作品がずらりと展示されている。松本自身も幼少から慣れ親しんだキャラクターだという
吟醸酒造りや地ビール造りの工程が見学できる「伏水蔵」では、主に1972年から小島功氏が描いた二代目カッパの作品がずらりと展示されている。松本自身も幼少から慣れ親しんだキャラクターだという

 歴史と伝統を重んじつつ、黄桜ブランドを次の世代にも愛着をもってもらえるようアップデートさせていく。そんなテーマのもと、松本はこんな“次なる一手”も睨んでいる。

松本 戦略的には、海外のマーケットをさらに広げていくつもりです。昨年は、日本全体で日本酒が450億円以上輸出されているように、清酒業界にとって中国、アメリカ、ヨーロッパを中心とした海外マーケットは年々伸びているのですが、フランスのワインが世界中に2兆円を超える規模で輸出されていることを考えると、日本酒にもまだまだポテンシャルがあると思っています。

 たしかに近年、海外で日本の“SAKE”が大いに注目を集めているのは周知の事実。その醸造過程や、ワインと同じように土地の環境要因によって異なる味や香りが生まれる特性などが日本の良さとして評価されていると言われ、またそれがオーガニック志向の強い欧米でウケている側面もあるだろう。松本は、その潮流をかなり早い段階で感じとっていた。

松本 2016年に経営を学ぶためにドイツに留学し、その後、新卒で黄桜に入社してからは、海外営業部でアメリカやフランスなどによく行かせてもらいました。当時から、海外の方々が日本酒文化にリスペクトを抱いてくれていることがひしひしと伝わり、将来への可能性を感じていたんです。国ごとにベースとなるお酒の嗜好は違いますし、実務面では輸出入の規制なども異なりますが、これまで黄桜が築いてきた幅広い知見を生かしながら、より細かなニーズに順応することでどんどん仕掛けていきたいと考えています。

 そのビジョンを具現化していく上での課題のひとつが、自分自身が「京都をもっと知る」こと。

松本 地元にはまだ私が熟知しきれていない京都の一面がたくさんあります。そこは素直に認め、学んでいきたい。特有の歴史と文化がある街なのは言わずもがなですし、任天堂さんや京セラさんをはじめ、世界的な企業が本社を置く先進都市でもあります。そして何より、「伏見」は元々「伏水」と呼ばれていたように、地下水がとても豊かな場所。だからこそ今でも蔵元が非常に多く、200年、300年という歴史を持つ酒蔵もめずらしくありません。今後は、黄桜の代表として生まれ故郷である京都、そして伏見にしっかり根ざした仕事をしていけるようになりたいと思っています。

 黄桜の社長に就任してまだ3ヶ月あまり。年齢も若い。しばらくは会社の中からも外からも厳しい目で見られることは彼自身が誰よりも理解しているが、怯むことなくチャレンジしていくつもりだ。

松本 本当の意味で顧客や社員の皆さんから100%の信頼を得るためには、シンプルに誠実に働くこと。それに尽きると思いますので、歯をくいしばって頑張っていきたいですね。

 そんな松本にとって、またひとつ大切な糧になっているのがメンズノンノでの経験や出会いだという。彼はどんなモデル時代を過ごしたのだろうか。
<後編(3月7日(土)午前9時公開)に続きます>

PROFILE
1993年3月25日生まれ。京都府出身。2013年の第28回メンズノンノモデルオーディションにて「花王肌男賞」を受賞し、専属モデルに選出。同期に現俳優の成田凌、清原翔ら。在籍中に青山学院大学から慶應技術大学大学院へ進学し、メンズノンノモデルは2016年6月号まで務めた。大学院卒業後、黄桜株式会社に入社して海外営業部に勤務。その後2022年にフードコンサルティングやレストラン事業を展開する株式会社イートクリエーターに転職し、2025年4月に黄桜に復帰。そして2026年1月1日、同社の代表取締役社長に就任。

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後編(3月7日午前9時公開)に続きます

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徳原海

大阪府出身。メンズノンノ編集部でのアルバイト勤務を経て2006年からフリーランスの編集者として活動。メンズノンノ、UOMOなどの雑誌をはじめ、現在は様々なファッションブランドやスポーツブランドの広告ビジュアル制作なども手がける。著書に「パラアスリート谷真海 切り拓くチカラ」(集英社)、写真と文で綴った欧州フットボール紀行「the Other Side」(ブートレグ出版)など。

Instagram :@kai.tokuhara

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