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対人関係が苦手でも、今の接客業を続けた方がいいですか?~MBお悩み相談その3

どうして他の人は普通にできることが自分には出来ないのだろう

一時は担当医のおかげもあって症状は治まるのですが、やはり閉鎖された空間が特に苦手となってしまい、映画館は今でもほぼ行けず(どうしても見たい作品がある時は発作覚悟で行きますが)、観覧車に乗れば発狂寸前となり、バスなどの公共の乗り物にも積極的には乗れません(特に長時間は無理)。

それでもなんとか大学は乗り越えますが、その後社会人になってからもその苦労は続きました。
何しろ会議に出られないわけです。狭い空間で簡単に席を立つことができない会議は、私にとっては地獄でした。

「どうして人が普通に出来ていることが自分には出来ないのだろう」
「(生まれも貧乏な家庭だったので)どうして自分ばかりがこんな目に遭うのだろう」
「皆と同じように普通に過ごしたいだけなのにどうして、なぜ」

と何度も何度も人生を嫌いました。
普通に過ごしている人がとてもとっても羨ましく感じられて、自分の出自と病気を心から呪いました。

そしておそらく私の病気の根源もなかよしさんと同じです。
「他人の目」をとにかく気にして生きてきました
髪型や服装だけでなく、歩き方やしぐさ、表情や目の動きに至るまでとにかく「変じゃないだろうか」と不安を感じる子供でしたし、それは今でも同じです。
「不安神経症」とも言えるかもしれませんが、自分の場合はそうした持ち前の性格が災いし、パニック障害に繋がっている気がします。

この病気について学生の頃はどこか「薬とか暗示とかで簡単に治るんだろう」と思っていたのですが……精神科医は絶望的な一言を僕に投げたのです。

「”完治”と判断するのが、とても難しい病気です」

絶望していた自分を救ってくれた、医師と母からの一言

今考えればそりゃあそうでしょう。
他人の目を気にするのはそもそもの私の性格なのであり、それが原因で病気を生んでいるのであれば、「完治」というのはなかなか難しい。

しかし当時私はそれに大変な絶望を覚えたのです。

「治ることがないかもしれない」
「一生皆のように普通には暮らせない」
「会議に出れない、バスに乗れない社会人なんて生きていけるのだろうか」

そんな漠然とした不安と恐怖に最悩まされながら、抗うつ薬の投与などで様子を見ながら社会生活をなんとか送っていました。

さてそんな私ですが、冒頭に書いた通り今でもこの病気は完治していません。
今でもバスには乗れないし、人の車の助手席にも乗りたくないし、会議は今でも苦手で大勢いる場の会議には出席することができません。
(後述しますが、講演会やトークショーといった「自分の意思で動くことができる、自分が主導権を握っている場」では問題ないのです)。

でも今の私はそれをなんとも思っていません。
病気であることをこうして公言もできるし、発作が起きても「面倒くさいな」と思うことはありますが絶望するなどは一切ありません。
「まあいいか」くらいです。

そう思えるようになったきっかけは精神科の担当医(実は母も偶然にも同じことを言ってくれたので、正確には担当医と母の2名)に言われた言葉

「病気もあなたの一部なんですよ」

というもの。

私はパニック障害を患ってから、どこか「パニック障害前の自分」こそが「正しい自分」と認識していました。
元の正しい自分に「戻りたい」とばかり考えていたのです。
それこそが正しい自分であり、本来の自分であり、望むべき自分である、と考えていました。
だからこそ「完治しない」という言葉に絶望を覚えていたし、薬で制御する対処療法にストレスを感じていました。

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MB

エムビー●誰もが理解できる「オシャレの教科書KnowerMag」を運営。視覚効果や印象論などをベースにしたロジカルなファッション指南が好評を博す。「最速でおしゃれに見せる方法」「ほぼユニクロで男のおしゃれはうまくいく」などメンズファッション書籍の多数のベストセラーを始め、関連書籍は累計120万部を突破。月額500円のメールマガジンは個人配信では日本1位を記録、月額5千円のオンラインサロン「MBラボ」も常に満員御礼状態に。自身のブランド「MB」発のオリジナルアイテム、大手ブランドとのコラボアイテムも爆発的な売上を記録している。
よみタイ連載をまとめた本作の原作ビジネス書「もっと幸せに働こう」は紙版・電子版ともに多くの支持を集めている。

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