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“砂漠”なのに、スコールのように雨が降る! 白い砂で覆われた神津島の「裏砂漠」【山の名&珍プレイス 第5回 後編】

日本の山では最上位! 裏砂漠がもたらす美しさ

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 裏砂漠には環境省が設置した看板が置かれていて、そこにははっきりと「裏砂漠」と書かれている。国土地理院の地形図には裏砂漠と記載されていないが、これならば明らかに環境省のお墨付きがあると判断してよいだろう。ゆえに、「日本で唯一の砂漠は伊豆大島にある」という巷で見られる言説には、僕は大きな声で異を唱えたいのである。

こちらが環境省の設置した「裏砂漠」の看板
こちらが環境省の設置した「裏砂漠」の看板

 おもしろいのは、その説明文だ。転記すれば、「ここに降った雨は逃げ場を失い、全て大地に飲みこまれ、やがて伏流水として島人に数百年の豊かな飲水を保証してきたのです」となる。もしかしたらすっと読めてしまうかもしれないが、どこか違和感はないだろうか? 本来は雨が極度に少ない“砂漠”の説明なのに、わざわざ雨のことに触れているのである。要するに少し矛盾しているのだが、実際、太平洋に浮かぶ神津島は日本の他の地域よりも年間降水量が多く、ときにはスコールのように雨が降る地域なのであった。

裏砂漠にはほとんど植物が生えていない
裏砂漠にはほとんど植物が生えていない

 こんな神津島の「表砂漠」「裏砂漠」の白砂の風景は、流紋岩質の火山灰や溶岩が長い年月をかけて風化して生まれたユニークなものだ。とくに、裏砂漠のまるで月面のような白砂の広がりは、心から惚れ惚れしてしまうほど美しい。表砂漠と違って、裏砂漠にはベンチなどが設置されていないが、むしろ時間をかけてのんびりと休憩したくなるのはこちらではないかと思う人は多いだろう。

地面は水はけがよく、ここから浸透した雨水は麓で湧き出し、神津島の各地に“名水”を生んでいる
地面は水はけがよく、ここから浸透した雨水は麓で湧き出し、神津島の各地に“名水”を生んでいる

アイランドホッピングで楽しむ日本の“砂漠”

 島の規模自体が異なるため、伊豆大島の砂漠に比べ、神津島の砂漠は小規模であることは否めない。だが、それぞれに魅力は異なる。“スケール感”で言えば、やはり伊豆大島の裏砂漠。活火山ゆえの荒々しい雰囲気と、海まで見渡せる開放感もたまらない。それに対し、“美しさ”で言えば、僕は神津島の裏砂漠に軍配が上がると考える。島の上にいるはずなのに海はまったく見えず、自分がどこにいるのかわからなくなるような閉ざされた世界も不思議な感じだ。

 それにしても、名称こそ同じ「裏砂漠」だが、これほど違うものなのか? 船や飛行機を使ってアイランドホッピングをしながら、ぜひどちらの砂漠にも行ってみてほしい。

登山口は2カ所。“砂漠”以外の場所の大半は樹木で覆われているが、登山道はしっかり整備されているので歩きやすい。海に面した展望所が崖の上にあり、滑落には気を付けよう。(地図の参照元:YAMAP <a href="https://yamap.com/mountains/14164/" rel="noopener" target="_blank">YAMAPの当該箇所はこちら</a>)
登山口は2カ所。“砂漠”以外の場所の大半は樹木で覆われているが、登山道はしっかり整備されているので歩きやすい。海に面した展望所が崖の上にあり、滑落には気を付けよう。(地図の参照元:YAMAP YAMAPの当該箇所はこちら

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次回、連載第6回は5/3(日)9:00公開予定です

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高橋庄太郎

たかはし・しょうたろう
山岳/アウトドアライター。1970年宮城県仙台市生まれ。高校の山岳部で山歩きを始め、出版社勤務後の2年間の無職時代には国内外のアウトドア旅へ。その後フリーランスのライターとなり、ウェブメディアや雑誌を中心に執筆活動を続けている。近年はイベントやテレビへの出演も多く、アウトドアギアのプロデュースも手掛けている。著書に『テント泊登山の基本テクニック』(山と渓谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)、共著に『“無人地帯”の遊び方』(グラフィック社)など多数。

Instagram: @shotarotakahashi
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