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生き延びていくために日記を書き続ける──言葉の力あふれるZINEはこうして生まれた【中島とう子さんインタビュー】

泣きながら「私のことだと思って読んでます」と伝えてくれた

──それにしても中島さんの日記は赤裸々ですよね。好きな人との長文LINEのやりとりや、精神病院での日々のこと、性風俗店で働いていることなど、多くの人が他人には隠すようなことが書かれていると思います。恥ずかしいとか思ったりはしないものでしょうか?

中島 恥ずかしいっていう気持ちは全くないですね。元々周りの目があまり気にならない性分というのもありますが、自分のことをほとんど書いているのに、特定のできごとだけを避けるのは何か気持ち悪くて。やましい気持ちで何かを避けたら、読んでいる方にも必ず分かると思いますし。別に人生全てを切り売りするつもりはないし、自分の心身の安全と安寧をいちばんにしていますが、あえて隠す必要はないなと感じたらそのまま書いています。

──文フリで日記本を販売してみて、反響はありましたか?

中島 今まではネット上で日記を書いていただけだったので、どこでもない暗闇に石をただ投げてるみたいな感覚だったのですが、文フリでは初めて読者の方と対面することができました。そしたら「新幹線に乗ってきました」とか、「10年以上ずっと読んでます」と言ってもらえて。あと、泣きながら「私のことだと思って読んでます」と伝えてくれた方もいました。その言葉は、私が雨宮まみさんの文章を読んで思ったことと同じものでした。だからその言葉を貰ったとき、私が今やっていることは間違っていないんだという証をもらったような気がしました。

──勇気を与える側にもなったということですね。

中島 やっぱり読んでくれる人がいるっていうのは幸福なことだなって思いましたし、私も読者としていろんな本を読んできたおかげで今の自分があると思っているので、書くことや読むことで救い、救われながら、これからも読者の方と一緒に生きていきたいと思いました。だから今は、なるべく多くの人に手に取ってもらえたら嬉しいなという気持ちでいます。

──これからも日記を書き続けますか。

中島 そうですね。日記を書くことってセラピーになるんですよ。私は双極性障害をはじめとしたいろんな精神の病気を抱えているんですけど、自分についてとか、自分の日々について振り返って書くことって、回復につながっていくんですよね。だから、自分が生き延びていくためにも日記は書き続けなきゃと思います。

(2025年6月18日、集英社会議室にて)

37歳独身女性が約2年間交際したパートナーと別れ、愛することと愛されることを求めて這々の体で生きた1年2ヶ月間の日記。
noteに公開したものを加筆修正し、書き下ろしを3本加えたZINE。

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新刊紹介

山下素童

1992年生まれ。現在は無職。著書に『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』『彼女が僕としたセックスは動画の中と完全に同じだった』。

Twitter@sirotodotei

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