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人材が流出する日本で、続々と起業する外国人たちとは一体どんな人たちなのか?【大石奈々メルボルン大学准教授インタビュー後編】

「誰もが住み続けたい国」になるには?

――世界では、アフィニティ・ディアスポラとの関わりを深める政策を取る国も出てきているそうですね。

はい。たとえばアイルランドやスコットランドは歴史的に移民を送り出してきた国ですが、近年、ディアスポラ政策にアフィニティ・ディアスポラも含め、民族や国籍に関係なく、世界中に自国のサポーターを確保して国の繁栄に結びつける政策的アプローチを取り始めています。広い意味では、日本で2018年に始まった経済産業省の外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)も、アフィニティ・ディアスポラを誘致する政策と言えると思います。現在、この事業に18の地方公共団体が認定されており、外国人の起業を推進しています。中でも福岡市は、他のアジア圏との地の利の良さがあり、生活しやすく、食べ物も美味しいということで人気があります。追手門学院大学の藤原直樹先生によれば、外国人起業家の銀行口座開設に市の職員が付き添うなど、自治体としても手厚くサポートしているそうです。

メルボルン大学
メルボルン大学

――ご著書の中で「ディアスポラもアフィニティ・ディアスポラも日本のサポーターであり、応援団である」と書かれています。日本が今後、そうした「応援団」との関わりを深めていくには、どのようなことが大切になってくるでしょうか。

ディアスポラ政策の効果を高めるためには、安全保障の問題も考慮しつつ複数国籍を認め、様々な方法で人が還流しやすくなるシステムを作っていくことが重要だと思います。ただし、アフィニティ・ディアスポラの中には、1年のうちビジネスの繁忙期の3ヶ月だけ日本に滞在して住民税や町内会費、区の管理費などを払わない、という例もあります。外国人が日本に来て投資や起業をしてくれればそれでバラ色、というわけではなく、地域のインフラ整備など持続的な発展のために応分の貢献をしてもらう制度を整えていく必要があります。

それでも、人口減少や海外流出が続く日本に愛着を持って滞在する外国人の存在は貴重です。永住してもらえることが望ましいですが、実は、海外に移住する日本人が感じている「生きづらさ」、たとえばジェンダーの問題、子どもの教育、ワーク・ライフ・バランス等は、日本に住む外国人も共通して感じている課題です。これらが解決しなければ、いくら愛着があるからと言っても、彼ら・彼女らが住み続けることにはならないでしょう。日本が「誰もが住み続けたい国」になるためにも、ディアスポラやアフィニティ・ディアスポラと協力しながら、こうした課題に取り組んでいくことを、ひとつの可能性として考えてみてほしいと思います。

※前編記事「日本人の海外流出が止まらない! 移住前に知っておきたい『リスク』と海外と地方をつなぐ『ネットワーク』の存在」はこちら

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大石奈々

おおいしなな/メルボルン大学アジア研究所准教授。移民政策学会理事。ハーバード大学大学院社会学研究科博士課程修了(社会学博士)。国際労働機関(ILO)政策分析官、国際基督教大学准教授、上智大学教授などを経て2013年から現職。専門は日本研究、移住研究、国際社会学。近書に『流出する日本人――海外移住の光と影』(中公新書)がある。

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