2019.8.11
レジェンド漫画家・秋本治が40年続いた『こち亀』で原稿完成時に大きな快感を覚えた特別な回とは?
漫画家・秋本治の仕事への考え方、取り組み方を書いた『秋本治の仕事術 『こち亀』作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由』が絶賛発売中です。
刊行を記念して、「第1章 セルフマネジメント術」より選りすぐりの一テーマを掲載。ぜひご覧ください。
ひとつの仕事を終えた瞬間の幸せが次の仕事のモチベーションになる
幸せを感じる瞬間は、作品が一本完成したとき。全ページを一枚一枚チェックし、トントンと紙を揃えてホッとする瞬間は至福のひとときです。イメージ通りのものに仕上がると、次もがんばろうという熱意もわいてきます。
『こち亀』の中で、完成したときにひときわ大きな快感を覚えた特別な回がいくつかあります。まず、一番印象に残っているのは「希望の煙突」の回(141巻)。取材して1年くらいかけた末に、思い通りのものに仕あがったので、できた瞬間から大きな手応えを感じました。その回は読者からも大きな反響をいただき、本当に漫画家冥利に尽きるとはこのことだと思ったものです。
マンガのいいところは、つくり上げた現物を編集者に手渡しで納品するということです。いまはデータ化して、ネットでピッと送ることもできるのでしょうが、僕は手描きで仕上げた原稿を、担当編集者の顔を見ながら手渡しする瞬間が幸せ。そして「お疲れ様です」の一言をもらうと、本当に報われたという気持ちになり、やっぱり次もがんばろうとなるわけです。
そしてひとときの解放感を満喫した後、次のネームに取りかかるのです。