「DV男が最後優しくするみたいなこと」

佐川　あと、この漫画にはかなり強度の高い学歴ネタが随所にぶちこまれているんですけど、それはTさんのアイディアですか？

編集T　ちょっとだけ説明しますと、僕はあくまでも知識を与えることしかしてなくて、それをネタ化しているのは完全に凹沢さんご自身です。情報だけ渡すと、キレキレのギャグ漫画に仕上げてくるんですよ。

凹沢　それはたぶん私が性格悪いからだと思います（笑）。

佐川　まぁ、性格悪くないと創作なんてできませんから（笑）。とはいえ、どのエピソードもラストはハッピーな着地をされてますよね。どれだけ攻めても、後味を悪くさせないというか。主人公の正直はナチュラルに毒を吐きますが、読者は正直を嫌いになり切れないどころか、最終的には何か好きになっちゃうようになってる。そのへんもすごいバランス感覚だなと思うんですけど。

凹沢　DV男が最後優しくするみたいなことですよね、それ。

佐川　確かに（笑）。DV男的漫画……って言っちゃっていいんですか（笑）。

凹沢　でも私、実はストーリーの終わらせ方は佐川さんの『科挙ガチ』を参考にしてるんです。佐川さんも途中までめちゃくちゃな展開の物語を書いているのに、最後はいつもすごくいい感じに終わらせるじゃないですか。女の子のおしっこを飲む話だったのに、なぜか爽やかなエンディングを迎える、あの感じ。あれをかなり意識してるんです。

佐川　えっ、マジですか！？　まさかあの作品がそんな影響を与えてるとは……なんか、大変だったけど書いて良かったです（笑）。

凹沢　それと私、『ちびまる子ちゃん』が大好きなんです。もともと『ちびまる子ちゃん』みたいな漫画を応募して『別マ』でデビューしましたし。そのあとちょっと路線を変えて恋愛漫画を描いてみたりしたんですが、どうもうまくいかなくて。Tさんに「これ、新人賞だったら落選ですよ」って言われるぐらいの出来（笑）。

編集T 『別マ』には「まんがスクール」という新人賞があるんですが、選外の作品でもAクラスやBクラスに分けられるんです。凹沢さん、この恋愛描写だとAクラスです、みたいな話をよくしてますね（笑）。

凹沢　そうそう。だから、恋愛漫画はもういいやってなった結果、今ではよくわからない陰キャ学歴厨漫画を描いてます（笑）。なにかのまちがいで日本に持ち込まれた外来生物がそのまま定着したみたいな感じですかね。ブルーギルみたい、私（笑）。

佐川　いやいや（笑）。でもまあ、良い意味で異質な感じがありますよね。本気で『ちびまる子ちゃん』くらいの長期連載を目指してほしいです。

凹沢　学歴の話を永久にしてる国民的漫画（笑）。

佐川　いけます、いけます。世の中を見てくださいよ、なんだかんだみんな永久に学歴の話してませんか？　『かし恋』には現代学歴漫画のトップランナーとして頑張ってほしいです。12月には電子だけじゃなくて、紙の単行本としても刊行されるんですよね。

凹沢　ほんと、このご時世にありがたいです。長期連載目指して頑張ってみようかな。