2021.9.11
伝説の風俗誌『俺の旅』編集長・生駒明さんが見た、性労働に癒やしと救いを求める「限界風俗嬢」たち
性暴力の記憶、毒親、セックスレスや経済的DVなど、さまざまな事情で風俗の仕事を選んだ女性たち7人が、自らの思いを赤裸々に吐露しています。
風俗雑誌『俺の旅』編集長の生駒明さんに『限界風俗嬢』の書評をご執筆いただきました。
『俺の旅』は現場の体験ルポをこだわりとし、"体当たり取材”が名物の伝説的風俗情報誌です(紙雑誌は2019年に休刊。現在はムック本やWeb記事として継続)。
その編集長を14年以上務め、取材を通じて全国各地の風俗嬢に出会ってきた生駒さんは『限界風俗嬢』をどのように読んだのでしょうか。
「ここで働けて本当に幸せ」と語ったホテヘル嬢
本書は、風俗で働いたことのある女の子7人の、インタビュー集である。読後の率直な感想は、「確かに限界だなぁ」の一言だ。彼女たちにとって、今の日本は紛れもなく「戦争中」である。
最初に登場するアヤメという女の子が、先輩に売春を強要される話を読んでいるとき、終戦直後の沖縄の性被害にあった女性を思い出した。占領軍である米兵(強者)に一方的にレイプされ、泣き寝入りするしかない存在(弱者)であり、その後は生活のために自ら体を売るようになる。生きるために娼婦(風俗嬢)と化すのだ。
2人目のリカという女の子は、継父に犯されてしまう。これは明治~大正期の貧しい東北の農村の若い女性のようだ。口減らしのために、親に棄てられ、女衒を通して遊廓に売られる娘、の現代版を見ている気持ちになった。
アヤメは言う。「風俗で働いてみて、ここは危険じゃない、安全だって気がつきました」と。
私も、同じようなことを、風俗嬢から聞いている。2012年にインタビュー取材で出会った渋谷のホテヘル嬢はこう言った。「風俗で働けて本当に幸せ。コンビニのバイトも面接で落とされて、水商売も時間が守れず続けられなかった。でも、ここは受け入れてくれた。スタッフの人たちも優しくしてくれるし、ここで働けて本当によかった」と。
さまざまな苦難から、若くして人生に絶望し、精神を病み、情緒不安定な女の子たちにとって、風俗店は「自分を承認してくれる場」「自分が居ても許される所」、つまり「必要な居場所」の役割を果たしているのである。
最近は、リストカット、摂食障害、薬物依存などの、いわゆる「マイナス要素」を持っているメンヘラ嬢だけを集めて、そのことを“ウリ”にするデリヘルも登場している。このように、風俗には、多種多様な女の子を受け入れる「懐の深さ」がある。