よみタイ

目覚めると、身に覚えのない血の跡が……

目覚めると、身に覚えのない血の跡が……

 しかし次の日から、奇妙な低い音が聞こえてくるようになった。それは家にいる間中ずっと響いている。空気を震わせるようなノイズが、途切れることなく響いてくる。
 はじめは遠くかすかだった音は、日を追うごとに家へと近づいてきた。朝目覚めるたび、昨日よりも大きくはっきりと聞こえてくるのだ。
 
 三、四日たつ頃、その正体はヘリコプターのプロペラ音だと思い当たった。ただし、いくら空を見渡しても機体の影の一つも確認できなかったのだが。  
 さらに一週間もすると、もはや耳をふさぎたくなるほどの轟音ごうおんとなってしまった。ヘリコプターは、明らかにわが家の真上を旋回し続けている。しかし外に出てみてもやはり、屋根の上には異常がない。
 
 もうとても耐えられず、警察署へと駆け込んだ。
 〇月×日に人をひいたようです、調べてください。そう懇願した。
 警察ではヘリコプターなど飛ばしていなかったのだが、ちょうど同月同日にあったひき逃げ事件と状況や血液反応などが一致したため、後日、逮捕されることとなった。
 ただし、不思議な点がある。
 そのひき逃げ現場は、今まで彼がいっさい通った記憶のない道路だったのだ。

「そいつはね、今でも交通刑務所に入ったままだよ」
 ハンドルをにぎりながら、ドライバーさんは僕に以上の話を聞かせてくれた。
 友人の身に起きた出来事なので、細かな点はどこまでが事実かわからないという。
 そんなことを饒舌じょうぜつにしゃべり続けるオジさんの、やけに落ち着きのない瞳が、ずっと気になっていた。
 たぶん、これは友人ではなく、オジさん自身の体験談なのだろう。  
 そう確信してはいたが、僕はひたすら、素直に相槌をうつだけだった。

1日5分の恐怖体験、いかがでしたか?
『日めくり怪談』は毎日読んでもひと夏楽しめる、全62話を掲載。
詳細はこちらから。

1 2

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

吉田悠軌

よしだ・ゆうき●1980年東京都出身。怪談、オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。オカルトスポット探訪マガジン『怪処』編集長。怪談現場、怪奇スポットへの探訪をライフワークとし、執筆活動やメディア出演を行う。『怪談現場 東京23区』『怪談現場 東海道中』『一行怪談』『一行怪談漢字ドリル 小学1~4年生』『禁足地巡礼』など著書多数。
Twitterアカウント:@yoshidakaityo

週間ランキング 今読まれているホットな記事