2021.7.19
祖母に禁じられた遊び
子どもの頃、こっそり隠れてする遊びがありました。
私の実家は、四国の田舎町です。
そのためか、「しょい籠」というものを倉庫に置いていました。竹で編んだ大きめの籠で、背中にしょって荷物を入れる、昔のリュックサックですね。
幼い私は、それを頭からかぶって、ぐるぐる回るのが好きでした。
すっぽり入れば胸までくる大きさですが、それだと頭のてっぺんにぶつかって、ずれたり跳ねたり安定しません。なので、だらりと垂れたしょい紐に、あらかじめ左右の腕を通しておきます。その両腕をぴんと横にはり、籠を肩に乗せるようにかぶれば、ちょうどよく固定されるという訳です。
そして、ぐるぐるぐるぐる……体を回転させていくのです。
するとだんだん酔っぱらうような感覚になり、籠の目の隙間から、おかしなものが見えてくるのです。
まず、細かい編み目からわずかに覗く外側が、きらきら輝いていきます。
太陽や照明の光ではありません。
不思議な紫がかった閃光が、だんだんと籠の外に広がっていくのです。
それでもまだ、ぐるぐるを続けていきます。
すると今度は、白く細長いものが浮かぶのも見えてきます。
ミミズみたいですが、もっとスラリとした、絹の糸のような質感です。
きらめく紫色の世界に、白いくねくねが、たくさんたくさん飛んでいる。
そんな美しい光景を、両手を伸ばして回りながら、うっとり見つめていたものです。
ただし、その最中は人目につかないよう注意しなければいけませんでした。
祖母に見つかると、こっぴどく?られるからです。
「何しちゅう! こがなこと、どこで覚えてきたが!」
すごい剣幕で籠をとりあげられるのです。けっこうな強さで頭を叩かれ、泣きわめいたこともありました。
祖母がぐるぐる遊びを忌み嫌っていたのには理由があります。