2021.7.11
「仕事をするほど夫との心の距離が…」浜田敬子さんが読む『夫婦をやめたい 離婚する妻、離婚はしない妻』
「離婚する・しない」解決の道筋を、様々な夫婦の想定パターンをもとに法律的見地から詳細解説した1冊です。
本書について、元AERA編集長でジャーナリストの浜田敬子さんが書評を寄せてくださいました。
「均等法世代」としてメディアの第一線で活躍し続け、女性の生き方や働き方改革のパイオニア的存在としても注目を集める浜田さんが考える「離婚」とは……。
(構成/「よみタイ」編集部)
経済力は離婚の最終カード…ではなかった!
年に1回集まってご飯を食べる女性の友人たちがいる。それぞれ起業して会社を経営していたり、大企業の会社員だったり、フリーランスで働いていたり。会う頻度は多くないものの、心の底から信頼している“同士感”があるのは、最初の出会いの際に、メンバー1人の離婚話にみんなが相談に乗ったことも関係していると思う。仕事に忙殺されていた彼女に、元夫は「もっと家にいて欲しかった」と言って離婚を切り出したという。それから数年の間にさらにもう1人離婚し、メンバー7人中6人が離婚経験者となった。仕事をするほど、夫との心の距離が生まれる経験は、決して他人事ではなかった。
それでもメンバーたちが比較的すんなり離婚できているのは、それぞれが仕事を持ち、経済力があるからだと思っていた。実際、私の大学時代の友人たちはDV夫との離婚を考えても、パートである自分の収入では子どもを養っていけないと、我慢を続けている。私は、経済力こそがいつでも離婚できる最終カード、むしろこれさえあれば離婚はいつでもできる、ぐらいに思っていた。
だが、この『夫婦をやめたい』を読むと、ことはそう単純ではない。19の事例には、夫よりも経済力がある妻のケースもある。その場合、離婚の際には財産分与として、妻の収入も含めて夫婦の財産を分けることになる。夫に出て行って欲しい場合、自宅が共有名義であれば、夫分の持分相当額(ローンが残っていればその分も)を払わなければならない。親権で揉めるケースも少なくない。
取り上げられた中には、DVやモラハラといったケースもあった。特にモラハラ(モラル・ハラスメント)と呼ばれる言葉や態度によって相手を傷つける精神的な暴力は、今では広く認知されるようになったが、この線引きも難しい。「自分にも悪いところがあったのでは」と被害を軽視しがちな人がいる一方で、夫婦のコミュニケーション不足によって、相手のことを誤解していてモラハラと思い込んでいるケースもある。
筆者の南さんは、離婚を考える多くの女性たちの相談に乗ってきた中で、そもそも最初から自分の感情をうまく説明できる人はまずいない、と書いている。離婚に向き合うことになったとき、少しずつ説明できるようになるのだと。そして離婚の「暗闇」を抜けられるのは、離婚に至った原因とは別に、一度は結婚すると決めた自分の責任を引き受け、離婚後の「なりたい自分」が描けている人という南さんの言葉は、そもそも離婚とはどういうことなのかを深く考えさせてくれる。とかく相手のアラを探し、責任を押し付け合い、自分に有利に運ぶことばかり考えがちな離婚という作業が、本来は自分を取り戻す作業なのだと。19の物語は、決して離婚を積極的に勧めるでも止めるでもない。冷静に状況を見極め、「それであなたはどうしたい(生きたい)のですか?」と問いかけてくる。
今日本の離婚率は約35%。3組に1組が離婚をしている。これは離婚をした(できた)件数だから、「離婚したい」と考えている予備軍を入れると、もっと多いだろう。すでに離婚した人にも迷っている人にも、ぜひ読んで欲しい。
(文/浜田敬子)
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『夫婦をやめたい 離婚する妻、離婚はしない妻』は、登場人物の人生ドラマを読みものとして楽しみながら、離婚に至る(あるいは至らない)までのリアルな流れが学べる1冊。著者は、離婚な男女問題など家事事件を多く取り扱う弁護士の南和行さんです。
コロナ後に浮き彫りになる夫婦の溝、モラハラ夫に翻弄される妻、夫婦別姓と事実婚、同性カップルの別離、虐待家庭育ちの妻、セックスレスの先の不倫、うつ病夫とキャリア妻、子供が成長するまで先延ばしにする夫婦関係……。
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