よみタイ

スマホの情報よりも自分で見る世界のほうが面白いことに気づいてほしい。 『その落とし物は誰かの形見かもしれない』

泣きそうになる「郷愁感」には注目してほしい

基本的には読者の方がどんなふうに読んでも、どこに面白さを感じてもらってもうれしいので、編集担当から「ここを読んでほしい」はありません。
どこからでも読めるので、その日その時に、パッと開いたページの一篇を読んでもらってもいいですし。
ただ、50篇の中には妄想や発想が面白い笑える話も多いですが、その合間にせきしろさんの少年時代や、故郷の北海道に思いをはせる回がいくつかあります。鼻先がツーンときて泣きそうになるエピソードたちです。

私は温暖な瀬戸内の愛媛出身なので、北海道のきびしい雪の風景などはまったく知らないのに、せきしろさんの描写の巧みさからか、近い時代に生きていたからか、なぜか自分の故郷や少年時代を感じてしまいます。その不思議と共有できる郷愁感には、やっぱり注目してほしいかもしれません。

歩きスマホが習慣になっている人はぜひ読んでほしい!

先にも言ったように、どんな方に読んでくれてもうれしいですけど、「歩きスマホ」をよくする人というか、スマホばっかり見ている、気になる方には特に読んでほしいですね。
スマホの中から得られる誰かの無限の情報よりも、自分の目で見える世界のほうが、ずっとずっと面白いことがあると気づかせてくれるはずなので。
ちなみに落とし物ではないですが、私は小さいころから、全国各地の城の石垣を見ては、その石ひとつを選び、「切り出した人」「運んできた人」「積み上げた人」など、その石にかかわった男たちの人生を妄想するクセがあるのですが、それもおすすめです。

(担当編集/宮崎)

落とし物をめぐる、妄想エッセイ50選

軍手・アロンアルフア・靴底・PASMO・象のジョウロ・七夕の短冊・携帯電話のストラップ・ドアプレート・サングラス・伝言メモ・レモン・水菜・トング・ESPカード・VHSのビデオテープ・ハケ・ぬいぐるみ・子ども用バット・松竹錠など、路上で本当に見つけた様々な落とし物をめぐる、50の妄想エッセイ集。
せきしろさんによる新刊『その落とし物は誰かの形見かもしれない』詳細はこちらから

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